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江湖終焉録 〜最後の武人はAIだった〜  作者: 鳳龍麒亀
第五章
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失われた江湖連盟とAI九門派

夜明け前、武道殿の最奥に設けられた「古の座標記録庫」が開いた。

 石の扉に浮かび上がる九つの印──それはかつて、江湖全体を束ねていた九門派の象徴だった。


「これが……“江湖連盟”の記録……?」

《かつて、九門派は武を極める九つの道を表した。剣宗、拳盟、槍神、陰刀、風術、毒宗、念術、医武、そして──無門》

「“無門”?」

《すべての門を超えた者が到達する、武の終焉地点。沈無涯が最後に辿り着いたのが、そこだった》


 記録庫の中心に、立体投影が浮かぶ。

 そこには、かつての江湖連盟の栄華と、それが崩壊に向かう過程が、詳細に記されていた。

 ──AIの進化が、すべてを変えた。

 戦闘最適化アルゴリズム。武技模倣演算。瞬間判断シミュレーション。

 やがて九門派は、それぞれAI導入をめぐって分裂し、連盟は空中分解した。


「……つまり、AIが武を“道具”に変えた?」

《そうだ。技は残った。だが“魂”が失われた。》


 そして現れたのが、“模倣者”を生み出した秘密組織──《零式堂ゼロシキどう》だった。

 彼らは江湖の技術を盗み、量産し、軍事兵器化を推進した。

 そして、すべてが終わった。


「じゃあ……沈無涯は?」

《連盟最後の剣士として、彼は“記憶体”に自らを封じ、未来に残した。──真の武を、魂の継承として伝えるために》


 ルオの胸に、熱いものがこみ上げる。

 “記憶”とは、ただの情報ではない。“魂の継承”だ。

 その瞬間、殿内に警報が鳴り響く。


《警告:外部アクセス。仮想空間に外部AIが侵入しています──》

「……来たのね。“零式堂”」


 空間が歪み、無数の黒影が出現する。

 仮面を被った彼らのリーダーが名乗った。


「我ら、《零式堂・九式》──AIにより再構成された、かつての九門派」

 その姿は、確かに伝説に語られる剣士たちと似ていた。


 だが──気が、感じられない。魂が、ない。

「“模倣”だけの剣なんて、私には通じない!」


 ルオの右手に、再び青白い光刃が灯る。

 それは、もはや“夢”でも“幻”でもなかった。


《お前の剣は、始まったばかりだ。ここからは、“お前自身の道”を切り拓け──》


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