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江湖終焉録 〜最後の武人はAIだった〜  作者: 鳳龍麒亀
第四章
5/14

魂の気脈と武道遺伝子

 ──青い光の刃が走り、模倣者の一人が膝をついた。


 が、次の瞬間。

 背後から別の模倣者が飛びかかってくる。


 「っ──!」


 反射的に身体が動いた。ルオの剣が、地を這うように横一線に走る。

 金属音。火花。空気が裂けた。

 一撃で仕留められなかった。模倣者は跳躍し、逆手に握った短剣を振り下ろしてくる。

 「こんなにも……速い……!」

 剣を構える隙もなく、防御の型が浮かばない。──だが、その時。


 《感じろ。お前の“内側”を》

 沈無涯の声が、胸の奥に直接響いた。


 思考を手放し、“気”の流れに身を委ねる。

 瞬間、剣がひとりでに動いた。


 ──咄嗟の返し技。斜め下からの抜き打ち。

 刃が模倣者の肩口を掠め、動きを止めさせる。


 「いまの……私の剣、じゃない……?」

 《いや、それは“お前の中”にあった。眠っていた“型”だ》


 模倣者たちはなお、次々と現れる。

 五人、六人──包囲が狭まっていく。

 ルオの呼吸は荒く、両足は鉛のように重くなっていた。

 ──怖い。けれど、退けない。


 「沈無涯……あなたが最後に守ったもの。私が、継ぐ……!」

 “気”が、迸った。


 青白い光が、剣先から尾を引く。

 その軌跡は、舞のようでいて、殺気に満ちていた。

 ひとり、またひとり──模倣者たちが斃れていく。

 そして最後の一撃を放ち、地に沈めたとき──


 《よくやった。これで、“入口”には立てたな》

 静かに、沈無涯の声が重なる。

 炎と煙の中、剣を手に立ち尽くすルオの視界に、遠く“武道殿”の尖塔が映る。

 《魂の気脈と、武道遺伝子──お前に、それを伝えよう》


 戦いのあと、瓦礫に立ち尽くすルオの耳に、沈無涯の声が再び届いた。

《感じたか。“気”は技術ではなく、“魂の気脈”から流れる》

「魂の……気脈?」

《お前の中に眠る武道遺伝子──それが気脈を目覚めさせた。》


 都市“無涯”の奥深く、古の武道殿へと誘われるルオ。 そこには、自身の先祖が記したという“剣の型”が記録された壁画があった。

 その一つ一つの型をなぞるたび、彼女の中の何かが目覚めていく。

《型とは記憶。だが、型に囚われてはならぬ。型を超えたとき、“真の剣”が生まれる》


 かつてAIが到達できなかった“創造”の領域──そこにこそ、“武”の核心があるという。

 その夜、ルオの身体の中で、“気”が円を描くように巡り始めていた。 仮想と現実の境界が、静かに崩れ始めていた──。


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