表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
江湖終焉録 〜最後の武人はAIだった〜  作者: 鳳龍麒亀
第一章
2/14

武の記憶は眠っている ②

パルスが走る。


《──識別中》


 脳内に、直接響いてきた。外部音声ではない。意識に侵入してくるような、異質な感覚。彼女の額から汗がにじむ。


「え……? 誰?」


《識別完了。意識構造一致率、41%。 仮接続、可能。──確認。名を名乗れ》


 ルオは戸惑いながらも、声を震わせて名乗った。


「……ルオ・イエン。国家認定・記憶調査員第17号。許可コードは——」


《不要。問う。お前は“江湖”を知るか?》


「……え?」


 その単語は、彼女の知識にはなかった。

 翻訳AIに問いかけても、曖昧な返答しか返ってこない。


 ──江湖ジャンフー

 ──かつて、力と義の時代を支えた、武人たちの世界。


 その言葉をきっかけに、彼女の意識の奥底に、何かが流れ込んできた。


 草原。剣。飛び交う気。

 空を裂く掌打。地を割る剣気。

 死と誇りと義理と、武の名のもとに生きた者たちの記憶。


 それは、数千年を越えて眠っていた、武侠の記憶体メモリ

 ──名を、沈無涯しん・むがい


《……私は、最後の武人。武の終焉者。お前に、“剣”を思い出させるために目覚めた》


「ま、待って……私、戦うつもりなんか……!」


《戦うのではない。思い出せ。お前の中にも、“武”はある》


 その瞬間、ルオ・イエンの脳内に、不可思議な空間が浮かび上がった。

 草原に一人、剣を背負って立つ青年の姿。背後には、数百の敵。

 それでも彼は、笑っていた。


 沈無涯──伝説の武人の幻影。


 そして、運命は動き出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ