第三話
木々の隙間から漏れ出る光で私は目を覚ました。
「っ⋯!」
足がピキッと痛む。昨夜の伏線(?)の回収だろうか、しっかり足が痛い。
ふと視線を感じて周りを見回すと目の前の茂みがごそごそと動いていた。
(どうする〜?)
茂みの中にいるものが安全かどうか分からない。話しかけるべきか、話しかけないべきか。
(どうする〜?)
2度目の検討。気になるなぁ、気になるなぁ。悩む。安全性と好奇心を乗せた天秤がグラグラグラグラ揺れる揺れる。
おもむろに足が茂みの方へ進んだ。グラグラと揺れた天秤の上からうっかり安全性が落ちてしまって好奇心にガンっと地面にめり込む勢いで傾いてしまったようだ。ゴソゴソと動く茂みをごそごそと漁ると手に温かいものが触れた。その温かい物体はビクッと体をはねさせ手にもふもふさらさらとした手触りのものが手首に巻きついてくる。とりあえずつまんで茂みの中から出すと
なんか変な生物がいた。
狐のような、猫のような、イタチのような、魔法少女に勧誘してくる幻聴が聞こえてきそうな見た目な気がしなくもなくもないような、そんなうっすい紫がかった銀色の見た目の謎生物である。
(どうする〜?)
n回目のシンキング。ここでポイッとしてしまうか、毛皮を剥いで焼いてモグモグするか、ペチペチ叩いて起こして話を聞くかこの3択。地面にポイッとして近くにあった枝でツンツンしながら「あなたならどうする!?」と心の中のアリストテレスに問いかけるも
「好きにしたらよくね?( ´・ω・`)」とのお言葉を返された。3択のひとつ選べやボケェ。とりあえず心の拳でアッパーを食らわしたが何も解決策が出てきていない本日朝晴天未定。どうすればいいのだろうか、見当もつかない。いやついてはいるのか?解決策の3択が見当なのか。ならついてはいるな。
自問自答無意味なループをしている間に謎生物が目を覚ました。
(なるほど、ツンツンに無抵抗だったのは気を失っていたからなのか。)
数分間ツンツン無抵抗の伏線が回収されたことに清々しさを覚えつつ、目を覚ました謎生物に話しかけてみる。
「えぇっと、ふーあーゆー?」
「( ´・ω・` )?」
あなたは誰ですかと聞いたつもりだったのだが、伝わらなかったらしい。さっきのアッパー食らわしたアリストテレスと同じ顔をしている。無性にイラッとくる顔だなオイ。苛立ちからの心臓のドキドキに耐えながら私のスタンダード言語、日本語で問いかけてみる
「あなたは誰ですか?」
「おぬしに良識があるのならおぬしから名乗ってから人に名前を聞くのではないか?」
日本家屋の縁側で緑茶を飲みながらみかん食ってそうな人(偏見)の口調で話す謎生物に遠回しに馬鹿にされた気がする。頭の中の何処かがぷつんと切れたようで心臓のドキドキボルテージが限界突破した。
「質問に質問で返すなよ!」
自分でも驚くぐらい大きい声が出て、それと同時に心の中の広大な海の水が目から溢れ出した。
「!」
謎生物は目を大きく見開いて驚いていた。当然だ、私でも驚いているんだから。だけど頬を流れる温かいモノは一向に止まらない。
私は溢れる感情に身を委ね、涙を流し続けた。
気のせいか、謎生物が頭を撫でてくれた気がした。
急募:語彙力
なんか長い名前の人って賢そうに見える気がする。いや、その発想がまず阿呆なのか!!