表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラッドドールとヴァンパイア  作者: 詩月結蒼
一章
3/20

一章②

 この世界には、吸血鬼(ヴァンパイア)が存在する。

 ヴァンパイアは強い力を持った特別な生き物だ。

 だが、ヴァンパイアにも弱点がある。それは、三日に一回は人の血を飲まなければ死んでしまうことだ。

 そんなヴァンパイアのために存在しているのがブラッドドールである。


(だが、まさかこのような幼い少女がブラッドドールだなんて……)


 ブラッドドールはヴァンパイア用の血の何百倍もの値がつくモノだ。圭のはレンタルにしろ、それなりに値は張った。

 だが、ここまで歳若い娘……少女と言うにも幼すぎるブラッドドールが来るとは思ってもいなかったのだ。

 少女は圭をしばし見つめた後、ゆっくりと立ち上がり、丁寧に挨拶をした。


「はじめまして、ごしゅじんさま」


 声は想像していたよりもずっと、見た目よりもずっと幼く、か弱く、鈴のようだった。


「つよく、けだかいゔぁんぱいあのごしゅじんさま。このたびはぶらっどどーるをごりよういただき、まことにありがとうございます」


 話している言葉は大人が使う言葉だが、話し方は拙い。


「ごしゅじんさまのため、ぶらっどどーるとしてちをけんじょうさせていただきたくぞんじます」


 ブラッドドールとしての教育が、知識が、こんなにも小さな身体に刻まれているのだと圭は知った。


「これからどうぞ、よろしくおねがいいたします」


 そう言って、少女は恭しくお辞儀したのだった。


(なんだ、この生き物は……)


 この少女は圭が想像していたよりもずっと、不思議なモノだった。

 まず、幼すぎる。

 これほどの年齢のブラッドドールが存在するだなんて、圭は聞いたことがなかった。

 第二に家族が何年もかけて身につけていく所作や口調が、この少女にはある。

 一体、どれほどの訓練を受けたのかと疑うほどだ。


(……何か、話さなくては)


 きっと、この少女は何も知らない。

 無垢で、清廉すぎるのだ。


「私は御影圭。君の……ご主人様だ」

「みその、けいさま……」


 覚えられるように、慈しむように、少女は主人の名を復唱する。


「わたしの、ごしゅじんさま……」

「……ああ、そうだ」

「わたしの、ごしゅじんさま。つよくて、けだかいゔぁんぱいあのごしゅじんさま……」

「……強くて気高い、だなんて言うな」

「なぜですか?」

「…………」


 圭は答えない。少女は圭の回答を静かに待つ。

 沈黙の時間が潮時を迎えた時ーー


「あるじ様」

(……この声は…………)


 凛とした声が、二人の耳に入った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ