表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラッドドールとヴァンパイア  作者: 詩月結蒼
一章
2/20

一章①

 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎




 車が早朝の帝都を駆ける。

 暁が空を統べる今日。

 少女は暗闇の中、一人(ふけ)っていた。


(きれい……)


 ここがどこかもわからないが、少女が断言できるのはただ一つ。


(わたしはまだ、だれかにひつようとされているのね)


 何かの隙間から差し込む光が、高い夜の星空に見えた。

 ガタガタと揺られ、視界が安定しない。

 脳の処理能力が低いからか、動かぬはずの光が流れ星のように思えた。


(このくりかえしは、いつまでつづくのかしら)


 少女は、気づけば監禁され、気づけば暗闇に、気づけば見知らぬ誰かの家に……そればかりを何度も繰り返していた。

 この日もまた、手足を拘束され寝ていたはずが、何かの箱に詰められているようだった。

 あるところで揺れが収まった。


(ここがもくてきち……?)


 何処へ行こうとも、少女がすることは決まっている。

 それを少女自身もわかっていた。

 今回ので、もう、六回目だからだ。

 また、揺れが始まる。

 少女の目的地で待つ、目的の者のところへと運ばれるのだ。


(ごしゅじんさまにあったら、わたしは……)


 少女は頭の中で何度も確認する。

 するとーー


「御影(けい)様でしょうか?」

「ああ。配達か。ありがとな」

「仕事ですから。では、私はこれで」

(みかげ、けい……。あたらしいごしゅじんさまのなまえ?)


 少女が青年ーー圭に手渡される。


(どんなひとなのかな)


 少女は圭を見ようと光の差し込んでいる方に目を近づけるが、揺れることもあり、上手く見えなかった。




 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎




(さてと……)


 圭は大きな段ボールを抱え、自室に向かっていた。

 中に入っているのは、昨日の夜に頼んだモノだ。


(本当は、こんなモノを使いたくはないのだが……)


 だが、コレを使わなければ、やがて圭は死んでしまう。

 誰だって、自分の命が天秤にかかれば、自分の命を取るものだろう。

 圭はそう考えていた。

 ビリビリ……と紙を破る音が部屋に響く。


(どんなモノが入っているのやら)


 圭は、軽い気持ちで箱を開けた。


「! お前が……」


 大きな箱には、小さな少女がすっぽり入っていた。

 黒髪、黒目の小さな少女だった。

 何処か儚げで、だが歳相応の幼さで溢れている。

 だが残念なことに、顔はとても美しいのだが、服はボロ雑巾のように汚れていた。

 少女は起き上がると、圭を見つめた。


(こんな少女を、俺は買ったのか……?)


 嫌悪と気持ち悪さで吐き気がした。

 今まで圭は、裏で取引している輩を好ましく思っていなかった……むしろ、軽蔑していた。

 しかし、今は圭もその界隈に手を染めた一人だ。

 こんな少女を、圭は自分が買っただなんて思いたくなかった。

 後悔しても、もう遅い。

 どのみち買うことになっていたのだろうから。


「っ……。君が吸血用人形(ブラッドドール)か」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ