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立ち上がって、歩く  作者: 葦家 ゆかり
11/29

片足のおじいさん

午後は団体でのリハビリはなく、スタッフは個別で自分の担当する患者を回りリハビリを行っていく。


対象は状態が悪くスタッフが1対1でつかなければ危ない患者や、施設に入ったばかりでまだ慣れていない患者だ。


昼休みを終え、最近入所してきたばかりの椎木(ついき)さんという男性患者のところへ行った。


「おはようございます。椎木さん、今日は体調はどうですか? リハビリに呼びに来ました」


私が彼のいる部屋のカーテン越しに声をかけた。


「おう。リハビリね、行けるよ」


そう声がしてカーテンを開けると、七十代後半の小柄な男性が本を閉じるところだった。彼は糖尿病で左膝のやや下から足を切断していた。


しかし左足がないこと以外はごく普通の人だ。読書が好きでリハビリに迎えに行くといつも本を読んでいる。



「車いすに移れますか?」


「うん」


彼はベッドに腰掛けて右足だけに靴をはき、車いすの肘おきとベッドの柵をそれぞれの手でつかんでひょいっと車いすへ移った。


 私は車椅子を押して椎木をリハビリ室まで案内した。


「ところで、今日は何年の何月何日か分かりますか?」私が聞くと、椎木さんは今日の日付けを間違いなく答えた。


「ばっちりですね」


「君に聞かれるかなと思って、朝新聞を読んだときにチェックしておいたよ」彼が自慢げに言った。


記憶力や見当識はしっかりしているので、病気で足を切断することがなければ、まだまだ一人暮らしだってできていたんだろうなと思う。


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