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立ち上がって、歩く  作者: 葦家 ゆかり
10/29

お昼休み

コンビニで買ってきたサンドイッチを持って食堂へ行くと、ちょうど華原さんもやってきた。


「そろそろ佐藤さんも入職して1年経ったね。仕事は慣れた?」華原さんがお弁当を持ってテーブルに座り、私もその隣に座った。


「はい、だいぶ慣れてきました。もう1年もたったなんて信じられないです」


「働き出すとあっという間だよねえ。年を取るとさらに早く感じるよ」彼女が弁当箱をあけながら言った。中にはご飯とブロッコリーや卵焼きが入っている。


「その点佐藤さんはまだ若いから、比較的時間の流れもゆっくりなんじゃない?」


言語聴覚士の澤田さんがやって来て言った。


施設で出る食事を持って私たちの隣に座る。澤田さんはメガネをかけたぽっちゃりした短髪の男性で、華原さんたちと同世代だ。


高齢者の歯の衛生を管理したり、脳の障害でしゃべりづらくなった患者さんに言葉のリハビリをする。


「そうですかね。ずいぶんあっという間に感じましたよ」私が言った。


「働くって、ほんと大変だよなあ」


澤田さんはそうこぼして、山盛りにもったご飯を勢いよく食べ始めた。


施設の入所者の人たちが食べる食事と同じもので、今日のメニューは白身魚のあんかけと、小松菜のおひたしにひじき、杏仁豆腐、それにワカメのスープと白米だ。おかずの量は決まっているが、みそ汁とご飯は自分で好きな量をよそえる。


「今日も食欲があるね、澤田さん」


華原さんが彼の茶碗を半ば呆れた目つきで見つめながら言った。


「うん、やっぱり元気な1日は大盛りのごはんからだね」


「澤田さんは夕食もここで食べて帰ってるんだよね」華原さんが言った。


「うん。もうアパートも解約してさ、ここでシャワー浴びて、空いてるベッドで寝たいなあ」彼が言った。


「それ、あと一生ここにいれるんじゃない」


 華原さんが言って、私が笑った。



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