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⑲星の見えない夜に、灯りがとけて
空気はまるい
君の背中に腕を回して
目を閉じる
まるい空気が顔にぶつかり、消えていく
知らない初めて
バイクの後ろで見つけた
ヘルメットを被せる手、ベルトをはめる音、頬を掠める体温
すべてが私の特別で
星の見えない空
走り出した景色に灯りが溶けて、私もとけて
夜に混ざる
赤で止まるたびに、灯りも私も変わらないことを知る
固まった身体をほどくぬくもり
缶コーヒーとミルクティー
立ち昇る湯気は同じく白い
飲み終わったら君は帰ってしまう
私を残して
残された私はどうしたらいい
タイミングも運命も神様もいたはずなのに
たった一歩を踏み出せなかったのは
私なのか君なのか
私の隣は君じゃない
君の後ろに私は乗れない
遠ざかる背中
私に残されたのは、ほろ苦いミルクティー
空気はまるい
もう会えない
まるい空気は、星の見えない夜にとけたから
感想は甘口で。




