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友と師

主人公を七歳に変更しました!


 家に帰えると母と見知らぬ老人が、食卓の椅子に座って雑談していた。


「リーマードさん!」


 父はその腰掛けていた老人とどうやら知り合いの様だ。


「おぉ、ザード。元気だったか?」


「えぇ、お陰様で」


 その後、しばらく話を聞いていると、この老人は剣聖と呼ばれる程の凄い方らしい。昔、父が一週間ほど指南して貰い、そのお陰で今の強さを身に付けたそうだ。


「ーーーそう言えば、リーマードさんはどうしてこちらに?」


 不思議そうに母が尋ねた。母もその頃に何度か会っていたそうだ。


「なに、旅人途中で偶々通っただけじゃよ。それに、数少ない弟子の一人に会いにな?」


 すると、父は気付いたように私の事を話した。


「そう言えば師匠、うちの息子を紹介してませんでしたね。グレム、挨拶なさい」


「こんにちは、グレムと言います」


「こんにちは私はリーマードと言う放流の旅人さ」


 そこからはリーマードさんを含めて、雑談をして今日は私の家に泊まることになった。


 翌日、そのお礼に私の剣術について指南してくれるそうだ。


 翌朝、私と父はいつもの通り素振りをした後、軽い打ち合いをした。


 少しいつもと異なるのはリーマードさんが見ていた事だろう。


「ふむ、まだ二年程度しかしてないそうだが、基礎は身に尽きているようだな」


「えぇ、師匠に教わった通り、基礎が重要だと学んだので」


 リーマードさんは納得したように頷いた。


「打ち合いはこの歳なら十分じゃ」


 すると、リーマードさんは腰を上げて、父から木刀を借りた。


「教えるには実際に打ち合った方がよいからのぉ、ある程度できていてよかったわい」


 リーマードさんがゆっくりと木刀を構えた。その瞬間、目の前に巨大な怪物が立っているかのような気迫がリーマードさんから漂っていた。


「やはり、師匠は凄いですね」


 父は長年憧れたヒーローを見るように、興奮した様子で息子との打ち合いを待っていた。


(凄まじい気迫だ……!ただ構えただけで、まだ素人の私でさえ力の差がハッキリとわかる)


「ほれ、打ち込んで来なさい」


 リーマードさんは気迫を強めながらも、どこか楽しそうな感じで私に呼びかけた。


(……よし、この人には私の本気を望んでいる。この人は私とは明確に違う領域にいる。………私よ、何も遠慮は要らない。………()()()()をぶつけろ!)














 リーマードはかつて、世界から『剣聖』と呼ばれていた。彼が戦場に立つだけで、相手の兵は慄き、存在するだけで敵が白旗を上げた。例え相手が勇敢に戦いを挑んだら、千を越す死体の山を作ったという記録が()()()()()


 培われてきた力は、年齢と共に衰えたが、それに比例するように剣の腕は更に洗礼され、その剣技を見た吟遊詩人が、「彼の剣は、一振りで千金に優る」と。


 そんな彼は、数少ない弟子の一人の息子に立ち会っていた。弟子であるザードは、一週間と短い期間指導しただけだが、私の事を師匠と慕っていたことには嬉しかった。


 そのザードには息子がおり、一泊泊まる御礼に指導を頼まれた。私も弟子の頼みともあり、喜んで受けたが、これまたその子は何故か気になる子だった。その子は真意を見透かすような知性を帯びた目をしており、自然と気が引き締まる気持ちにさせる不思議な子だった。


 まだ七歳と言うこともあり、顔にあどけなさが残っているが、弟子であるザードと似て、将来は女に悩まされそうな精悍な顔付きをしており、昔偶然出会ったザードの才を感じ、一週間だけだが、指導をした時を思い出した。


(さて、この子はどんな剣を見せてくれるのかな?)


 リーマードは剣の指導をする際に、打ち合いでの会話を大切にしていた。


 『剣には人格が映る』


 例え初めて剣を振るう者でも、剣にはその人の性質がハッキリと映る。剣聖と呼ばれる程の実力を持つリーマードは、特に打ち合いを通して、その人の性質を見る力に長けていた。


 彼は、その性質に沿って戦い方を指導すれば良いだろう。そう気楽に考えていた。


 すると、先刻までリーマードの気迫に押されて、緊張していた弟子の息子が顔を上げた。


(む?空気が変わった?いや、()()()?)


 あまりにも雰囲気が変貌した弟子の息子に、焦燥感が止まらなかった。


(何故じゃ?この子を見てると、焦燥感が出てくる……)


 すると、弟子の息子はリーマードに打ち込んできた。


 焦燥感にまだ驚いていたリーマードは、つい、遠慮なく弟子の息子を飛ばしてしまった。


「うっ!やっぱり強いですね」


 ふと我に帰ったリーマードは手加減を忘れた事に気付いた。


「すまん!つい力を入れ過ぎたな、その調子で打ち込んで来なさい」


「はい!」


 その後はリーマードは手加減を忘れることなく打ち合いをした。


 リーマードは謎の焦燥感が最初は残っていたが、打ち合うにつれてその()()に辿り着いた。


(なるほど、そういう訳だったのか)


 暫く打ち合いをしたが、弟子の息子の体力が尽き、その時点で終了とした。


 すると、それを見ていた弟子が私に近付いてきた。


「師匠、私の息子はどうでしたか?」


 昔はあんなに血気盛んだったのに、すっかり親の顔をしている弟子に、少し笑ってしまった。


「いやいや、あの年にしてはかなり良いじゃろう。これからが楽しみじゃのお」


「そうですか!それはよかったです」


 今立ち上がろうとしている弟子の息子を一度見たリーマードは、真剣な顔をして弟子に言った。


「弟子よ、お主の息子をわしの弟子にせんか?」













 


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