プロローグ
スローライフ系を書きたく、新連載しました。
ファンタジー世界全開で書いて行こうと思うので是非ゆっくりとご覧下さい。
*尚、作品に「こんなのあったら面白いな」などがありましたら、コメントしてくださると作品のレパートリーが増えるので、もしありましたら是非コメントをお願いします。
私は幸せだった。
二十歳頃に最愛の妻と出会い、三人の子宝にも恵まれた。
家族の仲は円満だった。
長男は孫を二人ほど見せてくれ、もう少しで曾孫も見せてくれる予定だった。
長女は残念ながら結婚はしなかったものの、私達はそれも一つの生き方だと納得して応援していた。
その代わり、と言うのも矛盾している気もするが、彼女は現在、世界展開する注目企業を創設した社長となっている。
世界展開する事を聞いた時は驚いたが、それ以上に嬉しそうな彼女の顔が今でも忘れる事が出来ない。
次男は俗に言われるニートだった。社会人になるまでは真面目で優しい子だったが、倒産や次に就職した企業でのパワハラにより、精神を病み家に引き篭もっていた。
彼が心に傷を負っている間、家族が増えて忙しい長男も、社長の日程に無理をして様子を見に来てくれた長女ーーーもちろん私たちも支えていたが、その甲斐あって十年後には社会復帰をして、なんと社会人向けのカウンセラーとして働いている。
そこで後輩と結婚して、一人の孫を育てている。
決して順風満帆の人生という訳でもなかったが、私にとっては満ち足りた人生だった。
無くなる直前も私より早く去ってしまった最愛の妻は居なかったが、家族や、慕ってくれた元会社の後輩、私に「俺より先に行ったら許さないぞ」と言っていた先輩、約束は守れなかったがそれは流石に許してほしい。
死に際も多くの人々によって見送られた私はとても幸せなのだろうーーー
それなのに、何故まだ死にたく無いと思ってしまうのだろうか?
………若い頃から私は妻と共に旅行に行きたいと思っていた。ハワイに行き妻と海岸で遊びたかった。イギリスに行き妻にお洒落な服を着させて、歴史深い建造物を巡りたかった。ノルウェーに行き壮大なフィヨルドを妻と見たかった。
けれど、結局その願いは叶わなかった。
まず先に妻が癌にかかってしまった。幸い早期発見で見つかり、命は助かったが、治療に予想よりも時間がかかり二年も掛かった。
リハビリを半年程した妻に、気分転換に旅行へ一緒に行こうと思ったが、その時、私も癌にかかってしまった。
妻と同じように早期発見で助かった。
しかし、2回も続けての入院により、旅行の資金が足りなくなってしまった。
歳もとり、海外の旅行は妻の体力的にもキツくなり、国内旅行に控えていた。
私の夢を知っていた妻は、申し訳なさそうに「すいませんね」と言っていた事が今でも鮮明に脳裏に残っている。
私が80歳になる頃、82歳だった妻が急死した。
死因は脳梗塞だった。
実はその頃、私がつい長女に夢の事を漏らし、長女が世界旅行の手配をしていた。
私も長女も妻には秘密にし、驚かせようと思っていたがまたも運悪く叶わなかった。
ーーー願わくば、来世ではこの願いが叶いますように。そして、またーーー
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