10.ずっと待っていた
分かってもらえない。
話を聞いてもらえない。
そう思っていたのは、彼も同じだった。
だからこそ、無理に私の部屋のドアを開けることはしなかったんだ。
待っててくれたんだ。
私のこと、分かってくれてた。
ずっと、寄り添ってくれてた…。
彼は深々と頭を下げたまま、固まっている。
魂のつながりだからって、私が考えたことが、
そのままテレパシーとなって飛んでいっているわけではないらしい。
現に今、彼が何を考えているのか、
私にはさっぱり分からない。
「……隣、どうぞ。」
腰をかけるように促す。
何を考えているのかは分からないけど、
彼を信頼できるような気がした。
彼は安心したように笑い、
隣に腰をかける。
ふと思い立ち、近くの自動販売機で缶コーヒーを買う。
いつもの缶コーヒーだ。
もちろん、彼の分も。
「このコーヒー、やっぱり美味しいよね。」
彼がコーヒーを飲みながら笑う。
もう、何を買うか分かっていたみたい。
缶コーヒーを飲みながら川辺に座る。
特に何を話すわけでもない。
でも、この空間が気持ちよかった。
少しずつ心に風が入ってくるような気がした。
イライラした気持ちが、スッと消えていった。
◇
…もう3時間くらい経っただろうか。
長いような短いような、そんな時間を楽しんでいた。
あれから彼とは一言も話していないが。
夜が更けていた。
そっと立ち上がる。
「家まで送りますよ。」と、彼が言う。
私の自転車の横に、もう一台自転車が止まっていた。
弟の自転車だ。あいつ、やるな。
ゆっくりと自転車を漕いで帰る。
なんだか、世界が少し違って見えた。
広がった様な気がした。悪い気はしない。
帰ったら、両親が出迎えてくれた。
起きて待ってくれていたのだろう。
何も、聞かれなかった。
「では、ボクは帰りますね。」
挨拶もそこそこに、彼は帰って行った。
少し寂しさを感じた。
だけど。
心の奥で、ちゃんとパイプで繋がっている様な感じがした。
安心して、心地の良い気持ちの中で、
眠りについたのだった。
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次回、第一章エピローグです。
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