その戦士、スライム倒し続けて5年が経ちました。2
「「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」
町から出てすぐの大草原地帯エトワール。
新米冒険者達がデビュー戦を積み、良質な植物素材が豊富で多くの素材加工家が愛している緑の大地。
両手両足を捥ぎ取られんばかりに振りに振りまくるその二人の姿は、傍からみればとても見ていられない程に鼻水は出てるは顔は怖いわで今にも赤子が泣き出しそうな鬼の形相をしながら息を巻いていた。
「ちょ、おっさん! こんな低レベル層の草原にでっっっかいミミズが出てくるなんて図鑑にも乗ってなかったぞどういうことだよ!」
「おい兄ちゃん巻末の付録さては読んでないな!? あそこにココ一体のボスモンスター一覧が書かれてるんだが、スライム以外全部読み飛ばして頭に他の奴らの知識入れてないだろ」
「そりゃこの道5年のスライム専門家冒険者だからな!! というか、あのミミズ東京ドームぐらいの高さぐらい普通にあるんじゃねえのかなあおっさ」
「……とうきょうどーむ? なんだそりゃ?」
尚、出身についての詳しい場所についてはこの世界の親しい人間であっても伏せている。
余りにも文化の発展とか技術力とか違いすぎるし、もしも、俺が別の世界から来た異世界人なんて他の人間にばれてしまったら……
この世界では亜人種が好まれていないらしいし、ケモ耳っ子もハーフエルフっ子も鬼っ子とかも迫害の目に合ってるらしいし……まあ考えすぎもよくないか。
その為に溶け込んだ5年間。この時間は、無駄にだけは、したくない。
「まあ、想像上の場所のお話だよ。100万人以上を収容できるような圧倒的な広さに、その国での大規模なイベントの際に会場として使ったり。とにかくスゲー場所なんだよ!」
「なるほどな。……とうきょうどーむか。コロッセオより広い場所で、日常的に笑いが起こるようなそんな場所。……資材が集まったら作ってみるというのも良いかもしれないな。」
「とにかくこのドデカミミズ!! 狩った方が手っ取り早いんじゃないの?」
「新人を食い物にされても面倒だしな。……若者たちは不安よな。なら元ギルマスたるこのアルベド様がやるしかねぇよなぁ」
そういうとおっちゃんは背中に差した2本の斧を取り出し踵を返した。
「アストロン・シェイクッ!!」
そういって空を切り裂いた。
……
空を、切り裂いた。
……
あるぇるぇ!?
「おいおっちゃんどこ斬ってんだよ。まさかとは思うけど不発とかじゃないだろうな? なんだそのウルウルしてる目振り向くなよ気持ち悪い近づくな近づくな男とハグはごめんだ……え、なになになになになになに?? やめてくれよそういうのほんと勘弁してくれよあーもうこれ終わった。あーオワタ―人生ここまでだったかはははははッ……」
おっさんから抱き着かれそうになったその時、巨大ミミズの体が三枚おろしのように綺麗に縦に斬り分かれ、紫色の煙を出しながら消滅していった。
「……兄ちゃん……ミミズってのは美味しいらしいぜ?」
「ええええぇぇぇぇ……」
――その日の夜。
「あれこれ意外といけるっすね。肉汁とかもいい感じでてるしなにこれ。牛肉かよ」
「そうそう。こんな食にもありつけると思って、黒コショウに、塩。あと香草なんかも用意してきたぞー」
「お、マジすかありがとうございます!!」
本日の夕食メニュー。巨大ミミズ肉のお焚き上げ。おっちゃん持参の調味料を添えて。
「おっちゃんおっちゃん」
「どうしたー? 今日の分はこれだけだからお代わりは無しだぞ?」
「いやそうじゃなくて」
「なんだ?」
日本人の性というのだろうか、それとも肉に合う食べ物を知っているからだろうか。俺は自分のメスを曝け出すために、ネカマをして得た知識。上目遣い、女声を存分に乱用して言い寄る。
「白米食べたいなあ……お願いおじさん。だめぇ?」
「フーデリアお前ミミズ肉食べて頭おかしくなったか? 早く寝なさい明日はとことんコキ使ってやるから」
気持ち悪いという言葉以上に精神的ダメージを得ました。






