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恐ろしくはあるが今更引き返せる距離ではないし、とにかく南へ向かうことにした。
魔獣に襲われないこと自体はありがたいことだし。寝てても安心なのは助かる、大型の獣も少ないし。それもよく考えれば変だよな。
迷いの森ではないと思うんだけど、魔術的なものでない場合気付かない、か?
獣が少ない理由にならないし違うよな。獣すら迷ってるとか?
この魔獣のいなさは偶然会ってないんじゃなくて存在していないんだと思うけど、魔獣だけを拒む森? それって神域のたぐいなんじゃ・・・
そんなところの奥に何があるのか。薄暗い森の先が不気味なものに見えた。
不安が増すように小動物すら見かけることはなかった。これは食料の不安もあるのでは。
「一日歩いて全く生き物を見かけないのははじめてだ」
なんだか肉体よりも精神的に疲れた。いつもより移動した距離は短いが、ちょうど開けた場所がある。
日も暮れてきたので今日はここで休むことにしよう。
念のため普段通りに獣除けを使い、火を起こす。この一連の行為も魔術だからラクなもんだ。
「採取も忘れてたし今日はアレだな」
このままの状態が続くのはよくない。精神的にも環境的にも。
水は魔術で用意してたけど水場を探すべきか? 川なら魚も獲れる可能性あるし。
この森で水場を見かけてないけど動物が生きているなら水場はあるはず。
もしかしてこの先には水場がないのか?
だから今日は動物にあわなかった? 一番近い水場が遠すぎるから。
既に迷っているし、今まで通り南にまっすぐ向かうべきか。
「結局、答えは変わらないか」
手持ちの果物でお腹を満たすと星を眺める。
「明日はちゃんと採取しないと食べられるものがなくなっちゃうな」
逼迫した状況ではないけど、うまいものが食べられる期限は迫っている。
やっぱりサクッと森を抜け出すべきだ。
南には向かえている。ループはたぶんしてない。
なら隣国には近づいているはずだ。この森がなにかはわからないけどそれは関係ない。問題なのはこの先に危険があるかどうかだけだ。
頭上で星がまたたく。
考えてわからないことは考えるべきではない。そもそも俺はこの世界のことを何も知らないのだから――