そして舞台の幕が上がる
「――お前を追放する」
華やかな場に似合わぬ大声があたりに響く。
第三王子と取り巻き立ちが1人の少女を囲み、糾弾しているようだが場違いとしかいいようがない。
場違いといえば男どもが囲うようにもう1人少女がいるようだが、1人の女を婚約者持ちの複数の男がどうどうと囲うのは貴族として恥ずかしくないのか?
なにより殿下の婚約者は目の前にいる彼女であるというのに。
「聞こえなかったか、メア。お前との婚約を破棄し、国外追放とすると言ったのだ」
顔色を悪くした令嬢が、それでもまっすぐに目を見つめて気丈にふるまう。
「なぜ、とお聞きしても?」
黒い影がゆらめいた気がした。
どうやらやつらの話を聞く限り、メア・シュトーレン伯爵令嬢が裏でナナリー・アラモード男爵令嬢をいじめていたということらしい。
虐げたとか嫉妬してとか正直馬鹿らしい。彼女にそうする理由がないではないか。
なにより証拠にもならない妄言やでっちあげばかりでまともな調査もしておらず、彼女にそのようなことをやってるひまもないことなど誰もが知っているはずなのになぜ直接手を出したなどと信じ込めるのか理解に苦しむ。
だから、殺した――――