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「やった!大きなカブを引っこ抜いたぞ!」→どうやってこれ食べきればいいんだ?「あ・・・」

作者: 八咫烏 瞻擧

 昔々あるところにおじいさんとお婆さんとその孫と犬と猫とネズミがいました。


 彼らは力を合わせてニョキニョキ生えてきたおおきなかぶを地面から抜くことに成功しました。


 そして、彼らはそれを甘くて美味しいスープにしてたらふく食べました。みんなが幸せな気持ちになったところで、犬と猫とネズミはそれぞれの家に帰りました。


 しかし、ここで思わぬ問題ができました。


 翌朝、まだ腹を膨らましたおじいさんがお婆さんにこう言ったのです。


 「なぁ婆さんや」

 「なんだい爺さんや」

 「昨日食べたカブあっただろ」

 「それがどうしたんだい?」


 ここで爺さんは言葉を詰まらせました。それほど事態は深刻だったのです。


 「あのカブ。ちょっとしか食べれておらんくて、めちゃくちゃ残っておるんじゃよ。ふんでもって、重さに耐えきれんと地面にヒビが入っておる」


 お婆さんは爺さんの言った意味がわかりませんでした。ですがいざカブを抜いた所にきてみると、爺さんの言った通り地面に大きなひびが入っているではありませんか。


 それだけではありません。その日々は爺さんと婆さんの家に向かってきているのです。このまま行くと、家が地面にずぶずぶ沈んでしまうかもしれません。


 「ど、どうする爺さん。あんな大きなカブわしらでは到底食べきれん」

 「そうじゃな…村のみんなに頼むしかないじゃろ」


 二人はカブを食べ切るため(自分達の家のため)に村のみんなにカブを食べてもらうよう協力を願い入れました。


 村のみんなはタダでカブを食べれることに大喜び。六十三人の村人全員が協力してくれることになりました。


 みんなでたくさんの食材を持ち寄って開かれた「カブパーティー」は、夜通し続きました。


 肉を食って、株をつまんで、魚を食って、賭けを飲んで、ダンスをして、酒を飲んで。


 これでようやくカブを食い終わる。そう爺さんは思っていました。


 ですが翌朝、爺さんが庭に出てくると、カブは全く減っていませんでした。


 それもそうです。昨日行われたパーティーで出された料理は、カブではなく肉や魚、酒がメインだったのですから。


 爺さんはすっかり弱り果ててしまいました。


 日々はもう家のすぐ近くまで迫ってきています。


 「婆さんや、もうあの手しか残ってないわ」 

 「そうじゃな。もうこれは食べきれん」


 二人に残された最後の手段。それは、村のはずれにある崖からカブを落とすことでした。村のどこかに放置すればひび割れの犠牲者が出てしまうでしょう。かと言って、近くの山に放置すれば崖崩れの恐れがありました。


 二人はカブを崖に落とすため、孫と犬と猫とネズミ、そしてご近所の田中(たなか)夫妻を呼び、手を貸してもらうことにしました。


 村外れの崖まで、「カブ落とし隊」がうんとこしょーどぅこぃしょぅ!と掛け声を上げながら運んで行った時でした。


 グキリと鈍い音を立てて、爺さんがぎっくり腰になってしまったのです!


 この前のカブを引き抜いた時の反動が、今になってきたのでした。


 おじいさんを医者に見せるために、運ぶのが嫌になってきた孫とネズミが「カブ落とし隊」を脱退しました。


 おじいさんと孫とネズミがいなくなり、ますますカブを運ぶのは困難になってきました。


 「ここの坂を上がればもう崖が見えます。頑張ってください」


 急な坂に入った時田中の妻が応援の言葉を残してそそくさと逃げていきました。


 「あのやろう!一人だけ逃げやがって!」


 そう言い残して、田中も逃げてしまいました。


 さあ残ったのは婆さんと犬と猫だけです。


 ひ弱な彼らは、ヒーヒーハーハー言いながら坂を登っていきましたが、所詮は老婆と犬と猫です。


 巨大カブを支え切れるはずもなく、カブは手元を離れて坂道を真っ逆さまに転がり落ちていってしまいました。

 

 転がっていったカブは、村へと猛スピードに突っ込んでいき、坂の近くの田中夫妻の家を薙ぎ倒し、孫のお気に入りの遊具をぶっ壊し、ねずみたちの巣穴を崩落させ、おじいさんとお婆さんの家以外の全ての住宅を破壊してしまいました。


 この大惨事を受けて、村ではカブを作ることが禁止になりました。


 カブが落ちていき、あらゆるものが破壊されたことから、「株の大暴落」という言葉はできたそうです。


 



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