ツンデレ幼なじみにラリアットキメたら異世界転生しかけた
俺にはずっと試してみたいことがあった。
それは幼馴染である菜乃花に、一度だけでいいからラリアットをキメてみたい。というものだ。
彼女は、まあ、俗に言うツンデレである。
会うたびに「死ね」だとか「キモイ」だとかを遠慮せず投げかけてくる。
もちろん、それだけ聞くと嫌われてるんじゃないかなんて思うだろうが、もちろんデレ要素も稀に見せてくる。
けれどだ。俺はもう少しデレてくれてもいいんじゃないかとずっと思ってきた。
小さい頃から彼女にはこれでもかと尽くしてきたつもりだし、何より俺は菜乃花の彼氏なのだから。
っていうわけで、今から彼女にラリアット(極めて優しい)をキメようと思う。
「たっく、なんで私があんたに呼び出されなくちゃならないのよ!」
どうにか説得し、俺の部屋に招き入れることができた。
と言うかその言い方はないだろ。普通に悲しいぞ?
ふん、と鼻を鳴らして俺のベッドに腰を下ろした菜乃花。
肩まで伸びた髪が微かに揺れる。腕を組んであからさまに機嫌が悪そうにしてはいるが、どっかのラノベヒロイン並に可愛い顔立ちなため、とても魅力的に見える。
さて、正式な当て方とは違うが始めるとするか。
万が一の事故を防ぐためにベッドに座ってもらっているわけだし、心配することはないだろう。
「菜乃花、行くぞ」
「え、ちょ! なに!?」
両手のひらを俺に掲げて、ぶんぶんと左右に振っているが止まる気は甚だない。
優しく、丁寧に。
俺は腕を彼女の首元にやり、そのまま――
「ぎゃああああああ!!!!」
彼女の叫び声が聞こえた瞬間、腹に強烈な痛みが走った。
あまりの痛みに意識は朦朧とし、視界は霞む。
「ぶぼあ……」
「だ、大丈夫!?」
◆
「えっと、はい。あなたは馬鹿なんですか?」
「かもしれませんね。でも後悔はしておりません」
無駄にきらびやかな衣装を身にまとった、どこか痛い女性に話しかけられた。
咄嗟に返事をしたが、どうして見知らぬ人間に『馬鹿』なんて言われてるんだ?
確かに偏差値は低いがIQは高いぞ。多分。
「痛いなんて失礼ですね。女神ですよ、私は」
おっと、この痛い女性は俺の心を読めるらしい。
ふーん、便利じゃん。
「便利って……。ともかく、あなたはまだ死ぬ予定の人間ではないので生き返ってもらいますからね」
「あ、俺って死んじゃってたんですね」
菜乃花のやつ……腹を殴るのは構わないが加減しろよ……。
◆
ともあれ、俺は無事に現実世界に帰ってこられたわけだが――
「もう! びっくりしたんだから! バカバカバカ!!」
それ以降、菜乃花はツン七割、デレ三割程度で俺に接してくれるようになりました。
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