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世界一周、出来なかった。  作者: せきねのたけし
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香港 1


 バスから流れる車窓は、紛れもなく外国で、僕は完全に見惚れていた。


 空港から出発したこのバスは、香港の中心地である九龍へと向かっている。海沿いを抜け、街に近づくと、テレビや雑誌で見たことのある、あの香港らしい景色が広がっていた。


 まぜっ返したような大量の人の嵐、日本とは少し毛色の違う薄汚れた高層ビル、それに車高スレスレまで低く突き出した、赤やら黄色やらの漢字が書かれた派手な看板が目の前に広がっている。僕は鼻息で窓を曇らせる程興奮していた。


 出発から約一時間。バスはこの旅最初の宿となるチョンキンマンション前に到着。


 このチョンキンマンション、ネットで調べるとこんな文言が出てくる。


 上級者向けの安宿。戦慄迷宮。悪の巣窟……。


「なんじゃこりゃ……」


 こんな所、旅初心者の僕なんかが泊まっていい場所ではない。

 

しかし、僕の好奇心は爆発してしまった。泊まるしか無いと思った。何か面白い事が起こるんじゃないだろうか。

 人間、恐怖心より好奇心の方が強くあるべきなのだ。


 バスから降りた瞬間、チョンキンマンションはいきなり先制攻撃を仕掛けて来た。数十人の様々な人種の客引き達が僕を包囲して、

「ヘイ!ジャパニーズ!ホテル!」

「ハッパ!シャブ!」

「ニセモノ時計!ロレックス!」

 この三つのセリフが四方八方から僕に降り注ぐ。


 はっきり言って超怖い。


 何とか無視して振り切ろうとしても絶妙なフォーメーションで奴らは僕を取り囲む。


 もう、こうなったら強行突破だ。

 彼らと目を合わせない様、下を向いて突破を図った。しかしそこで信じられないような強い力で右腕を掴まれた。


 めちゃくちゃ痛い!

 しかし、恐怖のあまり声も出ない。


 右腕を掴んだままその男は、鼻息を感じるくらい顔を僕に寄せて


「ヘイ!ジャパニーズ!ホテル!」


 怖……。


 僕はスーパービビりながらも腕を振りほどき、


「ホテル、決まってるのぉっ!」


 僕は声を上擦らせつつも叫んだ。すると奴らは客引き同士、互いの顔を見合わせ、大笑いしながら


「ホテル、キマッテルノォー!」


 と、復唱して来やがった。


 もう怖すぎる!まさに悪の巣窟!

 

 しかし、悪夢は更に続く……。


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