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聖縁剣  作者: フジスケ
第1章 規格外の少年
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第9話 笑顔で

 レナの毒がすっかり抜けてから数日経過した夜。それからは何事もなく村は復旧し、龍聖は村の図書館で魔法についての文献を読み漁った。


 この世界での法律、どんな魔物がいるのかなど、この世界にて生き延びる上で重要なことは念入りに。


 結果として、武器の携帯自体は合法、ドラゴンなどの災害レベルの力を持つ魔物が存在することなど、中々に興味深い内容に加え、次の6つの魔法を習得した。


―――――――――――――――――――――――

光属性

・特性付与

消費MP 40

 手で触れている物に術者が熟知している特性を付与することが出来る。

 但し、付与出来る数は対象物の出来映え次第。


・ストレージ

消費MP 8

 アイテムをしまい、取り出すことが出来る。入れられる上限は、魔法攻撃力のステータス×100グラム。魔力のステータスが上がると上限も増えて行く。

 MPはアイテムを入れたり出したりする穴を出現させる際に消費。また、中の物は劣化しないので傷みやすい食べ物などを入れるのに最適。


・テレポート

消費MP 5

 術者が一度行ったことがある場所へと瞬間移動が出来る。


・ピュリフィケーション

 消費MP 12

 術者を含めた対象の状態異常を治す。


闇属性

・鑑定

消費MP 3

 相手や装備品のステータスを覗き見ることが出来るが、生物に使う場合は中を覗き込まれているような不快感を与えるため、敵対行為と見なされる場合があるので注意。

 敵が鑑定防止のマジックアイテムを持っている場合、質にもよるが術者のレベルの0,8倍以上だと妨害されてしまう。持っていない場合は2倍以上で妨害される。装備品の場合はこの条件が当てはまらず、性能の高低に関係なく見ることが出来る。

 また、この魔法には呪文が存在しない。念じるだけで使うことが可能。


・バーサク化

消費MP 60

 理性を捨てることで思考能力以外の能力を飛躍的に向上させる。

 敵味方の区別がつかなくなってしまうので団体行動が不可能になる。

 解除には一定時間経つか、他者に気絶させられることが必要。

 また、この魔法には呪文が存在しない。念じるだけで使うことが出来る。


―――――――――――――――――――――――


 そんな時間が龍聖にはとても楽しかった。だがいつの時代も、楽しい時間はあっと言う間に過ぎる物である。気が付けば、サニエ村に着いてから3週間も経っていた。


(――そろそろ、頃合いかもしれないな……ゼティアさんにそのことを話すか……)


 心の中でそう思いながら、彼は知識のぎっしり詰められた紙面を捲った。




   ◇




~レナside~


 リュウセイさんの助力もあって、約3週間かけて特にトラブルも起きず、サニエ村は息を吹き返して更に豊かな村になった。


 私はそのことのお礼を言おうと、彼の姿を捜す。しばらく走り回っていると、リュウセイさんと村長が話している声が聞こえた。


 捜し人を見つけたことに笑顔になって私は一目散に駆け出す。

 村長との話が終わったら驚かせながらお礼を言おうと、笑いを噛み殺しながら私は家の角に隠れる。


「ありがとう、君には感謝してもしきれないな。オレ達に出来ることなら何でも言ってくれ。この村とレナを助けてくれた礼だ」

「え~っと、それじゃあ1つ」


 村長が頭を下げながらそう言うと、リュウセイさんは望みの内容を告げた。村長はその言葉に顔を一瞬曇らせはしたが、次の瞬間には、笑いかけながら了承していた。


「え――」


その言葉を、私も聞いた。聞いてしまった。顔からは笑顔が消え、驚かせる気も失せてしまう。


 そんな私は呆然としたまま、彼へ礼も言っていないにも関わらず、その場を後にすることしか出来なかった。脳内で、彼の言葉を何度も繰り返して。




   ◇




~三人称~


 全く欠けていない、夜空に映える満月が辺りを照らす夜。龍聖がふと夜風に当たろうと、浜辺に向かうと先客がいた。レナだ。


 レナは寝間着姿で浜辺に体育座りをして、池に移る満月をじっと見ていた。龍聖は彼女も夜風にあたりに来たのかと思ったが、すぐに違うと気づいた。


 ――明らかに、浮かない様子だったからだ。


「どうしたんだ?」

「……」


 声をかけるが、レナは何も言わない。代わりに膝に顔を埋め、肩を震わせ始める。


「寒いのか? 部屋へ戻りな、風邪を引いてしまうぞ」


 龍聖がそう言うと、レナは勢いよくこちらへ振り向く。目元には、何かが月明かりに照らされて光っている。それが涙だと気づくのに、さほど時間は掛からなかった。


「えっ!? ちょっ、どうした!?」


 その光景に慌てふためく。泣いているとは思ってもいなかったのだ。


「リュウセイさんは……」

「ん?」









「明日、この村を出て行くんですよね……?」

「……聞いてたのか」


 レナはか細い声で問う。日中、彼がゼティアに告げた内容は、


「明日俺がこの村を出ることを、レナちゃん達には黙ってて欲しい」


 と言う物だった。彼がレナのような村の子供達に言わなかったのは、このような反応をされて、決心が揺らいでしまうからだ。


「……イヤです」

「…………」


 再び膝に顔を埋め、ポツポツと喋りだす少女に対して少年は何も答えない。答えられない。


「リュウセイさんは私を、村を助けてくれました。………私はずっと貴方に救われるばかりで、まだ何も返せてないのに……それなのにッ!」


 溢れ出した感情はもう止まらない。声が大きくなって行くにつれて、涙が膝を濡らす。気がつけば泣きじゃくりながら、彼に抱きついていた。


「どうして……行っちゃうんですかっ……」

「………」

「行かないで……下さいっ……」


 どうやら気が付かないうちに、レナにとって龍聖はかけがえのない存在になっていたようだ。


 彼女はしばらくの間泣き続けたが、次第に落ち着き、ゆっくりと龍聖から離れる。だが目は赤く腫れ、今もまだ少し鼻を啜っている。心中はまだまだ穏やかとは程遠いのだろう。


「レナちゃん」


 龍聖は真剣な目をしながら目の前のレナを見据え、









「……悪いけど、君のお願いは聞けない」


 彼女の願いを断った。だが、断られたはずのレナはどこか納得した様子だった。


「そう、ですよね。私も頭の中では分かってたんです。貴方を引き止めることは出来ないって」

「……ごめんな」

「いえ、謝る必要はありません。元はと言えば、私の我が儘が原因なんですし」


 彼女は悲しみを押し殺し、微笑みながらそう答えた後、「でも」と付け加え、再び龍聖に抱きつく。


「しばらくは、このままにさせて下さい」


 龍聖は無言の肯定を示しながら、健気な背中をさすってあげることしか出来なかった。


 浜辺には波の音の中に、啜り泣くレナの声が静かに響いていた。




   ◇




 翌朝、龍聖は夜が明ける前に旅支度を済ませ、宿を出る。村の出入口には、口裏を合わせていた多くの村人達が彼を待っていた。ゼティアは龍聖に微笑みかけ、


「また、いつでも来てくれ」


 と、まだ寝ている子供達を起こさないよう小声で言いながら、大量の野菜や果物、魚を渡してくれた。


「ありがとうございます。美味しく食べさせてもらいます。収納の穴よ開け。【ストレージ】」


 龍聖は腕に何とか収まりきるそれらを抱えながらお礼を言い、【ストレージ】を発動させて穴の中に入れる。

 他の村人達にも別れの挨拶、お礼、握手などを済ませ、旅立とうと村人達に背を向けた瞬間――


「はぁ、はぁ……ま、待って下さ~~~~い!」


 レナが小声で叫ぶと言う、器用なことをしながら駆け寄って来た。龍聖は村を出る足を止めて振り向く。


「え? レナちゃん?」

「はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ。絶対に、また来て下さいね! ずっと、待ってますから!」


 レナは膝に手を当て息を整えると、満面の笑顔で念を押す。彼女はこれを言うためだけに早起きしたのだろう。


「……プッ、アハハハ。分かった、必ずまた来るから。それまで、待っててくれ」


 その健気かつ嬉しい言葉に吹き出しながら、こちらも満面の笑みでそう返すと、


「っ……はい!!」


 レナも頬を赤く染めながら、力強く返事をして頷いた。


「おお、レナについに運命のお相手さんが」

「応援するわよ、レナ」


 周りの村人がその光景を見てレナの感情に気付き、茶化し出す。その村人達の言葉を聞くと、自分がどんな感情を抱いているか、完璧に見破られていると知り顔を真っ赤にし、膝を抱えてしゃがみ込むレナ。


「あうあうあう……」


 と、頭からは湯気を出し、口からは言葉にならない声を出す。そんな状態を見て、龍聖は――


「だ、大丈夫か? 浜辺で泣いてた時薄着だったけど、それで体を冷やしたのか?」


 心配そうな顔で頓珍漢な発言をし、彼女の恥ずかしい記憶を周囲に暴露した。レナはさらに小さくなる。


「うううううううう……」


 ふるふると身体を震わせ、オーバーヒートしたかのように頭の湯気の量が増える。周りの村人はその光景を見て、クスクスと声を押し殺して笑う。


「ありゃ沢山ライバルがいるな。そしてこれかも増えるぞ。間違いなく」

「あぁ、お互い前途は多難みたいだな」


 ライバルの件に関してはドンピシャである。彼は地球での周りとのつながりも広いのだ。彼に窮地を助けられたことがある者もその中に大勢いる。そして龍聖はこれからも図らずに人を助け続けるだろう。


 それから数分後に何とか持ち直した(但し、まだ頬は赤く、目は合わせられなかった)レナと、村人達の見送りの言葉を背に、龍聖は新たな地を目指して再び旅を始めるのだった。


『お前、随分と鈍感なんだな……』


 バレないようあまり介入しなかったリーフは道中で呆れたと言う口調を隠しもせず、コイツはいつか背中から刺されるかもしれないと危惧する。


「ん? 何のことだリーフ? ……あ、そう言えば良かったな、最後に出られて。危うく作者に忘れられそうに――」

『言うなッ! やめろォ!! それ以上はやめてくれェ!!!』


 これ以上は聞きたくないと言葉が遮られる。誠に申し訳無い。そんな龍聖とリーフは騒がしくしながら、その脚を動かし続ける。


 次はどこに行くのか。それはまだ、分からない。



     第1章 規格外の少年 END









    Next Chapter… 第2章 勇者召喚

第1章はここまでです。次の第2章も私なりに頑張って書かせていただきますので、どうか応援をしていただけると、こちらとしてもありがたいです。

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