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聖縁剣  作者: フジスケ
第1章 規格外の少年
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プロローグ

初投稿です。拙い部分が目立つかもしれませんが、本作品を楽しんでいただけると幸いです。

 ――今から100年以上も昔の話。


 ある世界は二極化し、血で血を洗う戦争を巻き起こしていた。お互い大切なものを守るため、何人犠牲が出ようと戦いを止めることはなかった。


 例えその先に、何も残らないのだと理解していても。


 しかしそこに1人の英雄が現れたことで、戦いは終局を迎えることと相成る。その英雄は長きに渡って続いた戦乱を、たった1人、たった1週間で鎮めてみせた。そして破壊された幸せを命尽きるまで、修復しようと奔走したと言う。


 常に握られていたのは、七色に煌めく片刃剣。


 役目を終えた今、その(つるぎ)は暗闇に包まれ、この世のどこかに封印されていると伝えられている。聖なる縁にて結ばれた者が、再びその身を振るう時を待ち続けながら――




   ◇




 5月半ば。

 彼はいつもと変わらない日常を送るはずだった。


 茶髪を清潔感がギリギリ残るくらいにボサボサにした、高校3年生の三日月龍聖(みかづきりゅうせい)は登校中、日光とは違った強烈な光に突如襲われ、反射で咄嗟に目を閉じた。


 瞼を貫通する光が徐々に収まっていき、ゆっくりと目を開けると――そこに広がるのは見知らぬ樹海。


 頭上は自分の身長の約5倍以上はある樹木の枝で埋め尽くされ、今が昼なのか、夜なのかすら分からない有り様。


 幸い獣道なのか草が禿げている部分があり、歩く邪魔をする草を避けることは出来そうだが、大きな問題がある。


「……どこだここ?」


 ここがどこなのか知らず、西も東も分からないことだ。辺りを見渡しながら呟くが、答える者は誰もいない。


 彼が先程までいたのは人通りの多い市街地だ。しかしそれが今や完全に独りぼっち。声を掛けてくれる者はおろか、何事もなかったかのように通り過ぎて行く者すらこの場にはいない。


「とりあえず、俺の居る場所を調べなきゃ」


 一旦立ち止まり、スマホの電源をいれた。

 ――『圏外』だった。


「……嘘だろ」


 行く宛もない状態で樹海の中は、かなり絶望的な状況である。スマホの他に持っているものと言えば今着ている学生服、鞄の中にある教科書やノート、自作の弁当と財布くらいだ。


「……」


 鳥の鳴き声をバックにしばらく呆然と立ち尽くした後、彼は――


「まずは、この樹海を抜けるか。今は問題ないけど、食料や水分のことも考えなきゃいけないな」


 冷静な判断を下した。


 予想外のことでもあまり取り乱さないタイプであったのもあるが、彼の父親による休む暇もない過酷な訓練が、精神力をも鍛え上げてしまったのだ。詳しい話はまたいずれ。


 話を戻そう。樹海を歩きだして数十分たったが、人影も出口も見えない。足音らしき音も聞こえない。


 だが、彼は歩き続ける。更に数分が経過すると、足に何かがカツンと当たる音がした。


「ん? 何だこれ」


 足に当たった物をしゃがんで拾い、手に取る。その正体は薄汚れた灰色の腕輪だった。至るところに精巧な彫刻が施されており、そのままでも芸術的価値は高そうだ。


 今の彼にとっては無用の長物でしかないが、面白そうだと思う余裕がまだあったのか右手首に腕輪を着けた、その瞬間――


『……何者だ?』

「ッ!?」


 腕輪から若い男性の声が響き、さすがの龍聖でも驚いた。ギョッと目を見開き、話したであろう腕輪を凝視する。


『安心しろ、別に取って食ったりはせん。ところで貴様、名は何と言う?』

「……龍聖だ」


 警戒しながらも名乗る。黙秘しようと特にメリットがないからだ。情報量は龍聖が下の可能性が高い。ならば怪しまれないように、出来るだけ情報を引き出すべきだ。


『……聞かぬ名だな、どの国の出身だ?』

「? ……日本だ」


 彼は腕輪が何故そんなことを聞いて来るのかが分からない。自身と会話が出来ている以上、英語や中国語は使われていない。つまりここは日本だ。


『ニホン? どこだそこは』

「……は? 何言ってるんだ、俺と会話が出来てるんだからここは日本だろ?」


 龍聖は腕輪の言っていることが全く理解出来なかった。日本語を使っているのに、日本を知らないなどあり得ない。


『……一応訊くがこの星の名前はわかるか?』

「地球だ。当たり前だろ?」


 それを聞いて、腕輪は何か納得したような雰囲気を出した。


『ふむ……どうやら貴様は、この世界の存在ではないようだな』

「? さっきから何言ってるんだ?」


 その質問には、予想だにしない答えが返された。


『この世界の名は、エネロ。さしずめそちらで言うところの異世界だ』

「……はい?」


 もう龍聖は頭の中が、どうにかなりそうだった。










 第1章 規格外の少年

 ありきたりではありますが、常識外れな大冒険、スタートです。

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