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十人ドコロ  作者: ツヨシ
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まさとの通う小学校はいわゆる田舎の分校で、一年から六年まで全部あわせても生徒は十三人しかいなかった。


そしてある年、もうすぐ夏休みと言うときに、学校である噂が広まった。


その噂とは「十人ドコロには化け物が閉じ込められている」という噂だった。


まさともこの地で生まれ育っていたので、十人ドコロの名は、何度となく聞いてはいたが、いったいそれが何であるかは知らなかった。


まさと以外の生徒も、その点については同じだった。


いつも親や先生から「十人ドコロには近づくな」ときつく言われていたが、そもそも十人ドコロと言うものが何処にあるのかも、わからなかった。


そう言った状況の中、何の前触れもなく「十人ドコロには化け物が閉じ込められている」と言う噂がたったのだ。


噂の出所は不明。


先生が何故かただの小学生の噂を重要視して、全校生徒一人一人を何度も問い詰めたが、みんな「知らない」と答えた。


いったいなんなんだろうね、とか話をしていると、普段大人しくて目立たないよういちがドヤ顔で、「僕は十人ドコロを見た」と言い出した。


当然ながらよういちはみんなから怒涛の質問攻撃を受けたが、ろくに答えられずにしどろもどろになり、最後には教室から走って逃げ出した。


よういちはみんなから「嘘つきはどろぼうの始まり」とからかわれ、いつの間にかよういちの呼び名がどろぼうになっていた。


もはやよういちと呼ぶ子は、下級生を含めて誰一人いない。


よういちは早く夏休みが来ないかと願っていたが、よういち一人の思惑などとは関係なく、遅かれ早かれ夏休みは確実にやって来る。



夏休みに入るとまさとは、夏休みの自由研究をクワガタにすることに決めた。


そのためにはクワガタをなんとしてでも捕まえなければならない。

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