彼女:Bさん
「A君はさ、幽霊って信じてる?」
唐突に彼女はそんなことを聞いてきた。虚を突かれた俺は、
「まあ、生きている状態の人間が居るなら幽霊が居てもおかしくはないんじゃないかな。」
つまらない答えだな、と思いつつも自分なりに返した。彼女は、
「それもそうだね。でもね、私は信じてないんだ。」
肯定されたような否定されたようななんとも言えないそんな答えが返ってきた。いやこの場合は否定されてるのか。思わずなんで?と聞き返してみる。
「だって単純に気持ち悪いじゃない?認識できない人間がいるなんて私認めたくないし。私、自分の目で見たモノしか信用しない主義なんだよね。」
さいですか、というのが正直な感想だった。というかそれを俺に言ってどうなるんだ。別にそんな現実主義アピールした所で何かが起きるわけでもなかろうに。俺からしたら気まずいにも程がある。
なぜこのような状況になってしまったのかといえば、ほんの十分程前まで遡る。
俺は校門前で友達と別れた後学校を出て少し歩いた後にふと鞄を覗くと忘れ物をしていることに気づいた。普段ならどんな物でも取りに戻るなんて選択肢は頭に浮かんで来ないのだが、何故だか今日は不意に現れ、更にそれを選んでいた。走って戻ってみると幸い校門はまだ開いていたのですぐに取ってサッサと出ようと思い靴を履き替え教室に入ると、彼女が窓際の席に一人で座っていた。あまり話したことはなかったので変に無理して声をかける必要もないかと考え、そのまま忘れ物を取って帰ろうとした。ところが教室に入って数歩歩いた瞬間、急に彼女が
「A君、ちょっといい?」
とこちらを向いて話しかけてきた。断ろうか迷ったが、断って悪い印象を与えるのもなんだと思ったので
「うん?何どうしたの?」
という風に会話に応じることにした。ここであの冒頭の質問が飛んできた。
「そりゃ俺だって気持ち良いモノとは思ってないけどさ。でも見えたらもっと気持ち悪いし怖いんじゃないの。」
俺にしては珍しく反論してみた。こんな変な質問する女子でも見た目はそこそこ可愛いので会話すること自体は別に苦ではないことが分かったからである。
「あー、そういうもんなのかな?」
「そうでしょ。いや見たことなんてないからわかんないけど。」
「なにそれ?変なの。」
あははっ、と彼女は愉快そうに笑った。普段から全く笑わない訳ではなかったが、こんな風に大きな声で笑うのは見たことが無かった。今のがそんなに面白い会話だったのだろうか。正直彼女のツボは全くわからなかった。
その後はずるずる会話が続いていき、学校や家族、友達関連の当たり障りのないものが主だった。そして当然ながらそれらの会話のタネは尽きてきたので、俺はふと最初の質問が気になったので聞いてみることにした。
「ていうかBさん(会話の都合上Bさんとする)さ、なんで俺が教室入ってきたときにあんな幽霊がどうみたいな質問したの?」
「なんでって?」
「だって俺たちそんな話したことなかったし、というかここまで話したの初めてだし。そんなところにあの質問来たから正直最初戸惑っちゃったからさ。」
「なんでってそりゃ気になったからだよ。言っちゃえばなんとなくかな。」
「なんとなく。」
「そ、なんとなく。」
なんとなくであの質問をするのか、この子は。と、上から目線で言ってみる。やっぱり変わってるんだなということを改めて確認した。
そんなこんなで時計を見ると下校時刻ギリギリなことに気づいた。俺は慌てて忘れ物を自分の机から引っ張りだして
「やっべ、もう帰らなきゃ。ごめんもう帰るわ。」
と彼女に言った。そうすると、
「ほんとだ。もう帰らなきゃね。私はあとちょっとだけ残ってから出るから。」
彼女は笑いながらそう俺に告げると窓の方を向いた。こんな時間なのに大丈夫なのか、と思ったが急いでいた俺は鞄を背負った。そして彼女に、また明日!と言って教室を飛び出した。
校門を出て教室の窓を見るとまだ彼女は席に座っており、こちらを見ながら手を振っていたのでおもわず振り返した。
次の日、学校に来てみると彼女は来ていなかった。別段遅刻するようなタイプでもなかったので休みかと思っていたのだが、担任が朝のHRでいきなり俺たちに言い放った。
「えー、私達のクラスのBさんですが昨日の夜に亡くなりました。突然のことで皆さん驚かれたかと思います。ショックを受ける方も居るでしょう。ですが…」
これ以上の言葉は耳に入ってこなかった。亡くなった?あんなに笑って楽しそうにしていたのに?なんで?
頭の中でぐるぐるとたくさんの疑問が駆け巡る。その日は急に気分が悪くなり早退することにした。
後々知ったのだが、彼女は学校の屋上から飛び降りて自殺したそうだ。全身を強く打ち、即死だったらしい。何が彼女をそこまで追い詰めていたのだろうか。もしあの時俺が無理矢理学校から引っ張り出していたら彼女が死を選ぶ道を絶つことができたのだろうか。あの幽霊の話は死を遠回しにイメージさせていたのだろうか。俺が忘れ物を取りに戻ったのも何かしらの意味があったのではないか。様々な想像が思い浮かぶが、結局は想像でしかなく、無意味である。仮に合っていたとしても俺は彼女の死を絶つことも連想することも出来なかったのだから。
いったい彼女が昨日どのような感情を抱いていたのかなんて俺には分からない。それでも彼女が俺の心から完全にいなくなるということは決してないだろう。そんな気持ちを抱えたまま、今日も俺は生きていく。
初投稿
正直自分でも何言ってるか分からなくなってきたので今後のためにアドバイスください




