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消された学校

作者: 神名代洸
掲載日:2017/11/24

その学校はね、初めはそこそこ人数がいたんだ。でもね、最近の少子化の影響で生徒の数が減り、統廃合される事になった。

その一つがこの学校だ。


建物はそれほど古くはない。

まだ数十年しか経ってないからね。


そこでは色々な噂があった。


新しいからその手のはないと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。

新しいからこそ逆に不気味なのだそうだ。

理科室や音楽室、職員室などがそう…。


特に怖いのが深夜の理科室。

当直の先生以外は用務員の人だけ…。

なのにね?明かりがついてるんだよ。

誰もいないはずなのに。


いつつけたか?



ダレが?





教師の間ではまことしやかに囁かれていた。

誰かの呪いか?



子供たちの間ではちょうど『コックリさん』が流行っていた。

「コックリさん、コックリさん、教えてください。先生たちなんか最近変みたい。何かあったんですか?」


『ヒ・ミ・ツ。』



「秘密?知りたいけど難しいことは聞けないしなぁ〜。そうだ!先生に聞こう。担任の先生だったら教えてくれるかも。」


子供たちの期待は叶わなかった。

担任の先生はすでに帰ってしまっていたのだ。そういえば今日は用事があるとか言ってたよね〜。

用事って何だろう…。



それから数日後、学校集会があって突然学校を統廃合する為この学校を閉鎖することが伝えられた。子供達には訳がわからなかった。ただ、仲のいい子との別れは寂しく泣く子もいた。


慌ただしくそれぞれの担当地域の学校への編入手続きが始まる。

先生達は皆バタバタとしている。

ただね?備品全部は持っていかないようだ。

理科室の人体模型や、音楽室にかけられている有名な音楽家のイラストなどはそのまま放置されている。


何でだろう??


僕らはコッソリと先生の何人かをつけて、ことの真相を知った。

あの人体模型が動く?まさか…ね。

それが起きる現象は深夜になると言うので、自宅からコッソリと抜け出せる日があったら実行しようと言うことになった。


そして、揃って集まることができたのは急遽執り行われた廃校の最後の行事の日の前日。

皆懐中電灯を片手に学校の門をくぐる。

そしてあらかじめ鍵をかけずにしておいた一階の窓から校舎内に入る。


不気味だよね〜。

静かだし、暗いし。

何か出てもおかしくない雰囲気だ。

仲間の2人がビクついた。

全部で8人いるのだ。

固まって行けば怖くない。

そう説得して集まった仲間達。

実際人体模型が動くなんてことはありえない。でもね、当直室から離れた場所にある為先生に見つかることはない。それが恐怖の始まりとも知らず…。



「おい、ちょっとこれ見てみろよ。っかしいね〜、コレなんだよ?」

そう言って手にしたそれを突き出したのは好奇心が旺盛な男の子。

仮にA君としよう。

A君が手にしているのは何かの備品。

皆で集まって懐中電灯の明かりで照らしてみるとそれは人体模型の一部であると誰かが言った。

でも待てよ?ここ、…理科室じゃないぞ?

なんでこんな場所にそもそも落ちてたんだ?

皆顔が真っ青だ。


「ま、まさかね。誰かがイタズラして置いてったに決まってる。」

「ホントに?でもおかしくない?備品はちゃんと片付けて段ボール箱の中に入れたはずだよ?それがなんで全く関係のない場所にあるの?」

「こ、怖くないぞ!うん、怖くない。」

「これ…どうする?」

「どうするったって…、どうしよう?片付けに行く時間じゃないし、でもこのままにしとくのもね〜。わかるところに置いといて明日最後の日に片付けたら?」

「うん、それがいい。」

「だね。」

分かるように台の上に置いてその場を離れた。

問題の理科室まであと少しだ。



そして、問題の理科室に着いた。

施錠は…されてないようだ。

ほぼ全部段ボール箱に詰められて片付けられてるからか?

段ボール箱にはビッチリとテープが貼られていた。

何が入っているのかも分かるように箱に書かれている。


これは…実験道具。ビーカーとか割れやすいものを特に入れてあるようだ。薬品類はここには無かった。どうやら別の場所に保管しているようだ。

そんな事よりも僕らの関心は人体模型だ。

割と大きいのですぐに分かる。

う〜ん、特に変わっているところはないようだ。


ん?待てよ?さっきのあれはどう見たって人体模型に出てくるやつじゃ無かったか?僕らは人体模型の周りを取り囲んで細部にわたるまでじっくりと見て回った。でもね?無いんだ。無くなったパーツが…。じゃあさっきのは…何?


別の意味で真っ青になった僕らはその場を慌てて離れ、さっき見つけた場所まで戻ってきた。でもね、無かったんだ。

確か…心臓だった気がする。

やけにリアルだったから。

その置かれていた場所は色が変わっていた。


何の色?




皆でまた懐中電灯で照らした。

それはあきからに赤かった。

1人が恐る恐る顔を近づけて匂いを確認する。


鉄っぽい匂いだ。



じゃあこれは…《血》か?



誰か他の大人がいればよかったが、今ここには誰もいない。

当直室までは多少距離もあったが、半分に別れ、4人は当直室に、4人はここに残って現状保存する事に。


「大丈夫かよ…。」

「何かあったら笛拭けよ。」そう言って1人の男の子が笛を差し出した。

「うん、わかった。」


そう言って別れて当直室に向かった僕らはじきに着くと、当直の先生を探した。

そこにはついさっきまでいたような生活感があった。


その時スーッと何かが通った感じがした。

てっきり先生だと思った1人が「先生?」と問いかけたが何も反応が無く、振り返った時に真っ黒な何かを見た気がした。

「お、おい、さっき誰かいなかったか?」

「いいや、誰もいなかったと思うよ。何で?」

「いや、だってさっき誰か通っただろ?影が写ってたよ。」

「影って…こんなに暗いのに映るか?」


そう言えばそうだ。

懐中電灯の明かりが頼りなほど真っ暗なのだからそんな暗いところで影がはっきり映るなんておかしい…。

じゃあ、何が通り過ぎた?

震えだす仲間。

その場で大声で「先生!」と声を荒げたが静けさだけが辺りを包んでいた。

怖くなったみんなは固まってもといた場所へと早足でかけてきた。そして皆緊張しているようでガタガタと震えていた。


「どうだった?先生いた?」

「ううん、誰もいなかった。ついさっきまでいた感じはあったけど返事もなかったし…。」


一体何があったんだ?

僕らがここにくるまでの間に…。

分からない。

ただ、今ここには僕らしかいないって事。

怖いよね〜。

だからこの場所から離れる事でみんなの意見は一致した。

校舎からは出たほうがいいと1人の子が言い出すと次々と仲間が同意していった。



でもね、どうしたわけか校舎からは出られなかった。鍵がかかっているわけではない。でもね?おかしいんだよ。

ドアが開かない。

夜の闇は僕らにより恐怖を与えてくる。

辺りを見ていた1人の子が叫んだ!

「先生ー!」

音が反響してくるだけだ。

泣き出す子も出てきた。


「だからやめときゃ良かったんだ。どうするんだよ。」

「俺にそれを言われてもな〜。だいたいお前らだって賛成したじゃないか。俺ばっかのせいにするなよ。」

「う〜、帰りたいよ。」



その時ガタッと何かが落ちる音が聞こえた。

音の方角からして理科室のようだ。

行くか?行くまいかで議論したが、怖さが勝って誰も覗きに行こうとはしなかった。


腕時計をしていた子がいたので時間を確かめるもまだ深夜の2時。

当直室の先生がいないとなるとここからはだーれも出られない事になる。

早く誰か来て〜。心の中でそう思った子が何人いただろう…。


でもね、無理だったんだ。

でね?どうしたかっていうと…みんなで音がする方の部屋へと歩いていた。誰かいるかもしれないという期待を込めて。


そして、問題の音がした部屋へと入って行った。

そう、そこは理科室だ。

あたりは何も変わらず、シーンとしている。

ここで一体どんな音が聞こえたのか?

分からない。


でもね?1人の子が気がついたんだ。

ここにあったものがない。



そう、人体模型だ。



立ち位置が変わっていた。

しばらくジーッと見ていたら、ゆっくりではあるが動いている感じがした。

そこでビデオカメラを持っていた子に人体模型を撮らせ、再度時間が経ってから確認する。

すると明らかに動いているのがわかった。


「ひゃー!」

「きゃー!」

「マジ勘弁!」

皆各々叫んでいる。

でもその声に反応するものはいない。


「出よう。急いで!!」

僕の叫び声に反応して皆一斉に理科室から逃げ出した。

最前列にはビデオカメラを持った子がいて、後方を録画撮りしていた。

するとそこにありえないものが写り込んでいた。そう…人体模型だ。

ゆっくりではあるがついてきていた。

「う、後ろ!でた〜〜!」


その声に反応して皆一斉に最後尾の子の後ろを見た。するとそこにいるのは人体模型。

大股歩きでやってくるではないか。

怖いどころの話ではない。




恐怖…。



それ以外なかった。

皆叫びながらなんとか校舎から出られないかと窓枠をガタガタさせるのだが、ビクともしない。


手当たり次第にドアを開け、開いた場所に一斉に皆走り込んでドアを閉めた。

人体模型はすぐ目の前を通り過ぎて行った。


しかしさらなる恐怖が…。

そこにあったのは当直の先生の死体だった。

胸のあたりが黒い。

泣きながらも先生の顔や体にライトを当てると、胸がポッカリと空いていた。

そう、心臓のあたりだ。


あの心臓は先生のだったのか。だとしたら用務員さんは?確か一緒じゃなかったか?

何処かに隠れているのかもしれない。

泣く事も忘れ…神経が麻痺してしまっているのかもしれない。恐怖も消えていた。

ただ、涙を流しながら泣く子がいた。声を殺して。


「先生…。」

体を揺すっても起きない。

目は開いたままだ。恐怖で固まっている。

その瞼をそっと閉じて先生の顔にハンカチをかけた。恐怖の顔を見ない為に。


「ここから何とかして逃げ出そう。いいか?固まって行動するんだよ?バラバラになったら多分アウトだ。」

「それはいいけど…誰が先頭に?僕は怖いからやだよ。鉢合わせたら心臓止まっちゃう。」

「僕も。」

「私も。」

そういう子が何人も出て、残ったのは僕自身と2人の子だけだった。

3人が先頭に立ち、残りは横一列になって歩いた。もしもの時のことを考えてのことだ。


懐中電灯の明かりを頼りに前へ前へと歩いて行った。

途中、用務員室の前を通ったが、人がいる気配は感じられなかった。

一応のぞいては見たよ。

でも誰もいなかった。


出入り口の場所までやってきた。

何度も何度もドアを開けようとドアノブを回したが開かない。

その時1人の子がボソッと言った。

「入った場所からなら出られない?」と。

早速はじめ入った場所の部屋まで戻り始めたが、人体模型が何処にいるのかがわからず、怖がる子の手をぐっと握ってなんとか歩き続けた。


「あっ、あそこの部屋だ。」

女の子たちは嬉しそう…。

僕らはなんとも言えない気分だった。

あの人体模型…何処に消えてしまったのか見当たらない。


でもね、迷ってる暇などなかった。

遠くで音がしたのだ。

もしかしたら人体模型が動いている音か?

怖い。

辺りを見回しながら部屋のドアに手をかけた。

開けようとしたらそこに誰かがいた。

そこにいたのは用務員さんだった。

小さく縮こまっていた。


「君達…いたのか?」

「うん、噂を確かめにきたんです。」

「そんな…こんな時間にこんな場所に来ちゃダメじゃないか。親は気づいてないのかい?」

「はい。寝たの確認してから来たので…。夜中に起きなきゃ気付きません。」

「うちも。」

「僕んとこも。」

「私んちも。」

これには用務員さん、苦笑いするしかなかった。

「いいかい?君達が入って来た部屋の窓は開いてるよ。そこから逃げなさい。私は君達が出てから最後に出るよ。いいね?」

「はい。」

「じゃあ、行こうか。」


ゆっくり、ゆっくりと近づいていった。でも何も起きていない。

今がチャンスだ!

そう思い次々と窓から外へ出て行く子供達。

最後の1人になった時、ガラガラと部屋のドアを開ける音がした。そこにいたのは人体模型だ。

最後の子は足を踏み外しそうになったが、なんとか出ることができ、あとは用務員さんだけとなった。子供達の声が外から聞こえ、慌てて外に出ようとしたのだが、人体模型に捕まってしまい、そのまま窓が閉められた。


子供達はなんとか逃げることができたのだが、用務員さんは出てこなかった。


翌日、当直の先生と用務員さんの死体が発見された。

そのことは内緒にされ、僕らは学校を後にした。

風の噂では当直の先生は心臓が抉り出され、用務員さんは両手足を折られ、首が曲がった状態で発見されたらしい。


その後、学校は完全に廃校となり、足を踏み入れるものはいなくなった。

僕らもそう。

両親にはこっぴどく怒られたよ。

そんな時間に学校に忍び込むなんて…。

先生にも当然怒られた。

でもね、口止めされたんだ。

こんなことがある場所に誰も寄り付かないからね。土地と建物を売りたいという大人の事情というのがあるらしい。僕らには関係ないけどね。


地図からもその学校の名前は消えたよ。

建物の輪郭だけが描かれている。


消えてしまった学校だ。

2度と行かないだろう。



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