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傷つく足に目を配るのは

 穴はどこですか。

 できれば棺より深く。


 ある意味聞きたくなかった。

 兄様いわく、私の嫌がらせはこの世界基準では生温かったとか。

 いつの間にか王子と御令嬢が私を許したどころかキューピッド扱いしているとか。

 ジェリー君が実は攻略対象その三の魔導士が私の監視役、もといカメラ役として兄様に渡されたとか。


 何より、攻略対象その四の騎士に私の素がバレてたとか!


 彼は今までも兄様に相談していたらしい。これまで兄様はずっと袖にしていたけど、私ががらりと変わって何かがおかしいと感じたんだってさ。悩んだ末に攻略対象達と話し合って調べることにしたそうだ。

 皆様方が東奔西走して情報集めをした末に、騎士さんと私の対談の席が今回用意されたと。


 対談はもう惨敗も惨敗。

 いつどこで知ったのかも懇切丁寧に説明してくれたからねあの騎士さん。私の素が赤裸々に語られるこの恥ずかしさと言ったら。

 お蔭で私は言葉を交わすたびに表向きの性格も表情も崩れてしまった。貴族社会の荒波でポーカーフェイスが上手くなったと自負していたのに。

 あっちは爽やかな笑顔を終始浮かべていたけどな!


 あれから騎士さんも帰り兄様とまた二人。


「悪くないだろうに。この期に及んで何を悩んでいるんだ?」


 強いて言えば「どうしてこうなった」というか。知らない所で自分の話が進むって怖いねというか。

 兄様が言っているのはそういう話ではないんだと理解していてもさ、気持ちは簡単にはいかないんだよ。


「あの、いえ、でも、」


 やっぱり騎士さんが私に惚れる要素はないと思うのですよ。

 てんぷ……テンプレかな。物語でよくある流れではある。

 それは息詰まった末に町へ繰り出した日だった。家でもバレないよう気を張っていた私はそんな時にしか素を出していない。

 頑張って一人でこっそり抜け出して。町娘の体で口調も砕けて。

 こんな簡単でいいのかと頭を抱えたっけ。ちょっとだけ魔法という名の裏技を使いはしたけどさ。

 ともかく、そこに遭遇していたなら二度見される自信はある。

 けど! 惚れる要素がどこにあると!?


「私は名実ともに、どう考えても性格がいいと言えませんわ。

 兄様だってまだお疑いでしょう」


 そこなんだよ、普通の人ならまず何か企んでいると疑うでしょ。攻略対象なら尚更でしょ。

 兄様もそうだ。かつて兄様を「推し」にしていた私が心の内を分からないとでも思ったか。


「それなんだがな」


 来い、と兄様。

 私に言っている訳ではなかった。誰だろうかと待っていると、ぴょんとこの場の死角から出てきたのはジェリー君。

 カメラ役のジェリー君。


「本当の用件はこれだ」


 ……ええ、ジェリー君が出てきた辺りでなんとなく予想はついていました。大方私の真意を見定めたかったのでしょう。

 でも、つまりそれは、


 更に兄様が取り出したのは水晶のように透き通った石がはめられた何か。普段の私なら絶対に心踊ると確信できるのに、むしろ冷や汗が出るのはどうしてだろう。

 その何かはホログラムのようにこの場を縮小して映した。


「うわああああああ……!」


 案の定見られてた!

 父様にも母様にも侍女にも従者にも見せていないのに!


「あと、すまないんだが」


 まだあるんです……?

 今度は何が待っているんでしょうかね。私はもう色々と放棄したい所ですよ兄様。


「実を言うと殿下方も見ている」


 は?

 はぁ!?


「どういうことですか兄様!?」


「これはもう一つあるんだ」


 いわく? 魔導士がこの日のために?

 頑張ってもう一つ(こしら)えたって?

 何してくれてやがりますかあの魔導士……。


「直に殿下や御令嬢から接触があるだろうが、概ね好意的なものと言っていい。俺が保証しよう」


「拒否していいでしょうか」


「不敬罪になるぞ」


 ですよねー。


 なんだろう、この、色々な問題があっさり解決したのに納得いかないこの感じ。渡りに船すぎて逆に疑ってしまうのもあるし。私を信用しようとする皆はそれでいいのかというのもあるし。

 ……騎士さんのことも、うん。


 とりあえず穴堀ってから考えよう。

 羞恥を今隠さんでいつ隠すってんだあああっ!

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