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ある夏の流星群

作者: 誠二吾郎

 あなたは『なにかを探している』そう感じる時はないだろうか。

それはすぐに手に入るものなのか。それは既に存在してなくて手に入らないものなのか。


 前者にであれば君は幸運だ。すぐにでも手に入れたら良い。後者であれば心が寂しくなるだろう。

僕も一度だけそう感じた時がある。それも後者だ。

あの日の約束が果たせるのならば僕はなにもいらない。


 あ、そうそう、自己紹介を忘れてたね。僕の名前は佐藤浩二。地元の大学に通う学生だ。

いつのことだっただろうか。確か小学校の時、夏の真夜中のことだったかな。


ああ、そうだ。あの子が急に、星を見に行こうと言ったのがきっかけだったけ。

綺麗な夏の流星群が見えるってテレビで……。



「あなたはだれ?」


 僕はその言葉で目が覚めた。僕は寝ていたみたいだ。そこは部屋全体が真っ白で不思議な空間だ。

初めてくる場所なのだが不思議と妙な安心感がある。


 目の前には1人の少女が立っていた。


その少女は15歳ぐらいで黒のロングヘアーと麦わら帽子がよく似合っていた。


「なぜあなたがここに居るの?」


少女は驚いた様子だ。僕もなにがなんだか分からない。


「ここはどこだよ。こんな空間初めて来たぞ」


少女は下を向き、口を閉ざしている。そんなに聞かれたくないことなのか?


「……、君は何か未練があるみたいだね。そうでないと私はここに現れることはないから」


「未練……?なにもなかったけど……うぅ」


 僕は急にめまいがした。それも強烈なやつだ。


 その瞬間に僕はある女の子との思い出を思い出していた。


・・・


「浩二!!今夜海に行こう。今日は夏の流星群が見えるらしい」


 同学年の麦わら帽子を着た黒のロングヘアーの幼馴染が教室のドアを開けて話しかけて来た。


「それじゃ今日の夜20時。学校近くの山裏近くで待ってるから」


 そう言い残し、教室から去って行った。


おいおい、いきなりだな。僕の予定も聞かないで言いたいことだけ言って去りやがった。

本当に勝手なやつだ。まぁ行くけど。



小学校も終わり、僕は家に帰宅した。幼馴染って言っても女の子だ。ちゃんとした準備はやっておきたい。

僕は鏡を見て、よしと呟いた。


 約束の時間まであと30分。僕は早めに学校近くの山裏に着いてしまった。


現在19:30。周りは薄暗く、星が綺麗に見え出した。僕はワクワクしながら幼馴染が来るのを待った。


 しかし、20:00、21:00、22:00と時間は過ぎても幼馴染は来なかった。

僕は最初忘れているだけだろうと軽く思っていた。

だが、真実は残酷だ。交通事故だそうだ。夜になって周りが見えにくかったのが原因だったらしい。

急に居なくなってしまってからその気持ちは存分に広がる。



そう僕はあの子に言いたかった言葉があったんだ。

本当は君のことが……



・・・


「思い出した。思い出したよ。君が幼馴染の小咲だろ」


 僕はロングヘアーの女の子に聞いた。


「……うん。なんでわかったの?」



「うん。君の麦わら帽子を見てぴーんときたよ」


 僕は今がチャンスだと思い、口を開けようとした瞬間部屋全体が真っ暗になり真上に星が見え出した。


「星が綺麗だね。これが夏の流星群なんだよ」


 幼馴染の小咲が手で星を指差し、ウキウキとした表情で話す。


「これがデネブ、アルタイル、ここが織り姫さま、彦星さま」


僕はこの雰囲気に懐かしさを覚えた。このやり取り。いつだっただろう。忘れかけていた気持ちに僕はウルっときた。


僕と小咲は夏の流星群を見ながら、バカみたいな話をしていた。何時間経過したのだろうか。僕は分からない。

幼馴染の小咲が僕に向かって笑顔を見せた瞬間、流れ星が流れた。


 このタイミングだろう、と僕は気持ちを決意した。


「小咲!!僕は君のことが……」


 幼馴染の小咲が僕の口を人差し指で閉じる。


「それ以上はダメ。お別れが悲しくなる」


「え?それはどういう意味?」


僕は初めて告白しようとした事と、期待していた答えが違うことに動揺を隠せないでいた。

僕の動揺をよそに小咲は話を続けた。


「私はあの日の約束を果たすために、そう君と真夏の流星群を見るために、ここに居たんだと思う」

小咲の体が消えかかっている。


「もうさよならだね。寂しいけど、この姿でもう一度会えてよかったよ。約束を覚えててくれて嬉しかった」

小咲は麦わら帽子の下から笑顔を僕に見せた。



なんでだよ。せっかく会えたのに。なんで……。

ちぃ。本当に君は勝手なやつだ。これは今までの仕返しだ。


「笑った顔も怒った顔も大好きでした。君の隣で一生居たかった」


「バカ……」


 小咲は僕に笑顔を見せながら、涙を見せていた。その瞬間、僕の意識が遠のいた。


 起きた瞬間、僕は見知らぬ天井を見ていた。僕の目からは涙が溢れていた。

自分の中でなぜ泣いているのかわからない。大切なものを忘れた気がする。忘れてはいけない何かを。僕は何を……。


 後で聞いたところ、小咲の命日に僕は墓参りに向かう途中、小咲が交通事故を起こした場所近くにあるガードレールに勢いよくぶつかったらしい。

意識がないため緊急入院って流れだったと聞いた。


あれから5年の月日が経った。季節は夏。流星群が見える季節だ。

僕は現在大学生だ。この季節になるといつも思い出す。今も何かを探している気がする事を。

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