第1話『戦場学園』-6
<閉じる>アプリ効果、本を閉じることができます。
「自分で出来るわ!」
思わずツッコミをいれる。
<かけ算(二の段のみ)>かけ算ができます。ただし二の段のみ。
ヤバイ汗が止まらない。
<サーモグラフィー>周囲の温度が測定できます。
「使えねえ、使えねえ、使えねえーっ! 俺のデバイスはゴミアプリしか入ってねえのか! アサヒ、そっちは?」
「これ、どうやって使うの?」
「ダメ子おおおーっ!」
頼れる委員長を見る。
「ヨルコ!」
「待って、二ブロックの<火薬>ってアプリをインストールしてるから」
それは武器というよりアイテムか?
とにかくもう一度、自分のデバイスを調べてみる。八十個もアプリがあるなら、ひとつや二つ使える攻撃タイプのアプリがあるはず。
検索ページをめくって次のアプリを調べる。
<ブレイク>ターゲットに指定したアプリを強制的にブレイクできます。
「ん? ブレイクってことは破壊か? 相手のインストールしたアプリを壊せる……。これは使える!」
説明文に続きがあった。
『ただし発動するデバイサー本人が瀕死の場合のみ使用可能』
「なあ、ヨルコ。瀕死ってことは」
「レンガが死にかけた時だけ、発動できるってことでしょ」
「使えねえええーっ!」
思わず頭を抱える。
「瀕死の重傷って、もうアウトだろ! この戦場で大ケガしたら誰も助けてくれねえっての」
「そうね」
ヨルコ委員長は冷静でした。
「オーケイ、インストール完了。<火薬>発動!」
ヨルコがデバイスの画面をタッチ。瞬時に反応したアプリが委員長の足下に出現する。
木箱だった。小さい手の平サイズ。
で、どうしろと?
三人で少し離れて様子を見る。
「爆発しないわね」
「本当にただの火薬だけで……着火しなくちゃいけないのか、もしかして」
あのレッドドラゴンに追いつかれた。見上げるほどの巨体。
シャッコウが大きく息を吸い込む。
待て待て待て、ドラゴンがそういうモーションをする時は、アレを吐く時だけだろ。
出すのか、あの熱いブレスを吐くつもりか、おい。
こっちは足下にヤバイ物が置いてあるんだぞ。空気、読めよ、おい。
「くっそ、があああーっ!」
とっさに火薬アプリを拾い、全力でぶん投げる。
予想通りのエフェクト。ドラゴンの口から吐き出された赤い炎。
その顔面に火薬アプリが近づいた瞬間。
炎と火薬の運命的な出会い。
爆発。
手の平すっぽりコンパクトサイズとは思えない破壊力で、周囲に爆風と爆音、強烈な熱波が広がる。
自力で立っていられない。
風圧に負けて身体が浮き上がり、無抵抗のまま後方に吹っ飛ぶ。
容赦なく背中を打つ衝撃。一瞬、呼吸が止まる。
数秒の沈黙。全身の痛みをこらえ目を開ける。
完全に壊れた学校。誰かの悲鳴。周囲に広がっていた煙が空へと抜けていく。
「どーなってんだ……」
絶望的な状況。あれこれ悩む余裕もない。
ただひとつ明確なこと。
ここはもうすでに、戦場だった。
「このデバイス、本物みたいね」
「ああ、オモチャじゃないってことだけは、よーく理解できた」
すぐ隣りで倒れていたヨルコが呻く。白い制服が煤けていたが、とりあえず無事のようだ。
もう一人。
「アサヒ、アサヒは?」




