第1話『戦場学園』-5
それぞれ三人の腕に固定されたタブレット。複数の針が腕に食い込み外れない。だが痛みはすぐに消えた。まるで重さも感じない。この数秒で自分の身体の一部のように馴染んでしまった。
不意に真っ暗だった画面が起動した。
表示される文字。
<契約は成立した>
響く声。タブレットが喋った。
<我、異界より召喚されし魔の者。デバイスを生みし者>
息を飲む。
「魔の者……悪魔ってことかよ」
<百のデバイスに選ばれし百のデバイサーたちよ。生き残れ。我にたどりつき勝者よ、汝のあらゆる望みを叶えよう>
「デバイス……これのこと、だよな」
「選ばれたあたしたちが、デバイサーってことかしら?」
緊張した面持ちでヨルコがつぶやく。
<我が名は銀色悪魔、シルバーエンカウント>
シナリオが見えた。
<生き残れ。勝利せよ>
命を懸けた悪魔のゲーム。
「つまりこの悪魔のデバイスを手に入れた連中が、今まさに暴れ回っている……」
「どうしよう、レンガ君」
「やるしかねえだろ」
不安そうなアサヒの声。幼なじみの頭をポンとやって瞬時に腹をくくる。答えはこれしかない。
「覚悟、決めようぜ。生き残りを懸けたサバイバルの開始だ」
ここで即、逃げ出したら確実に死亡フラグだ。戦うしかない。
起動した液晶モニターを覗く。画面は大きく分けて三種類に分割されていた。
左側にマップ。自分の名前が中心にあった。すぐ近くにヨルコとアサヒの名前も表示されている。表示範囲は自分を中心に半径五十メートル。それより外側の情報は載っていない。
現在、表示されているのは三十メートルほど離れた所にいるあのドラゴン。名前がシャッコウと書かれている。そのシャッコウとほぼ重なるように表示されている名前があった。
赤尾キバ。
敵だ。学校を人間を何もかも破壊し、俺たちを追いかけ回すデバイサー。
ただしあのドラゴンがデカすぎてデバイサーの姿がここからでは見えない。マップ上ではすぐ近くにいるはずなんだが。
深く考えるのは後回しだ。すばやくデバイスに視線を走らせる。戦うにはまず武器が必要だ。
分割された画面の中央部分。現在は空欄になっている。少し上に『五ブロック』と書かれていた。他には何も表示されていない。スマホ同様に画面をタッチしてみるが中央部分は何も反応しない。画面の上にある『五ブロック』という数字も動かない。
のんびり待っている暇はない。
すぐに三分割の右側を見る。
右上に小さくメッセージが流れていた。
『インストール可能アプリ』
と表示されている。
触ると『検索』と表示された。右側はちゃんと反応するらしい。
すぐに検索をかける。
『ブロック数を指定してください』
ブロック……。出てきた数字は『一~五』まで。最大五ブロックのアプリがあるって意味か?
とにかく検索をかける。時間がない。
『五ブロック、該当なし』
次だ、次。
『四ブロック、該当なし』
『三ブロック、該当なし』
嫌な汗が頬を伝う。
『二ブロック、該当なし』
しだいにシャッコウが近づいてくる。震える手で最後のタッチ。
『一ブロック、該当アプリ八十』
「はちじゅうってなんだよ!」
画面にキレても仕方ない。とにかく武器アプリをインストールだ。検索した一ブロックアプリを画面の右側に表示させる。