第8話『暗闇と声』-1
暗くて周囲が見えない。
駅地下。崩れたショッピングモール。
デバイスの表面が弱く発光しているおかげで、かろうじて自分の手元だけ確認できる。
地下に閉じ込められたような状態だった。まったく地上の様子が分からない。
マップを見る。デバイスでお互いの位置だけは分かる。名前があるから四人とも生きている。
近くにメクリの名前もあった。
「完全に分断されたのか……」
ただ読モの名前がなかった。
マップに表示されていない。おそらくガレキに潰されたのか。
運が悪かった、と諦めてもらおう。すべての人を救えるほどの器はない。
「メクリ、どこだ」
「すぐそばに。いつでも援護できます」
さすがメクリさん。頼もしい足音が近づいてきた。
現在、地下の照明はほとんど消えている。ライフラインが途絶え、まともに電気も通じていないのだろう。この状況では仕方ない。
本来ならいくつもの店舗が並び、人が行き交う活気のある空間だが、こうなってしまえばゴーストタウンの印象しかない。
「レンガ君、どこー」
アサヒの声。距離は近い。
「こんなことなら照明系アプリ探しておけば良かったな……」
「ホントだよねー」
相づちを打つ声がかなり近い。崩れた通路の向こうに弱い光があった。
「あー、いたいたー」
向こうもデバイスの光を見つけて駆け寄ってきた。
「ヨルコ見たか?」
「ダメ、私のそばにはいなかった」
あの二人との距離はそれほど離れていない。せいぜい三十メートルか四十メートル。マップでは意外と近いはずなんだが……。
「この辺にいないってことは、ヨルコとユウトは上か?」
「うん、たぶん」
とりあえずあの黒猫さんが暴れている様子はない。巻き込まれずに二人だけ上に残されたのだろうか。
「せっかくメンバー揃ったってのに」
エレベーターは確実に動かない。階段やエスカレーターがあれば自力で地上まで上がれるんだが……。
「はやく合流しないと、だね」
「ああ、デバイサー同士の潰し合いは続いてるからな」
『白、発火』
突然、制服が燃えた。
「うお、なんだ!」
「ひゃ、燃えてる燃えてる!」
俺とアサヒ、メクリの制服が火に包まれた。
制服を叩き床を転がり、慌ててインストールした<飲料水>アプリをぶっかけて、なんとか消火する。
デバイスを見た。いる。いつの間にか接近されていた。
デバイサー、音刃ミオン。
「ずっとマップを見ていたはずなのに気づかなかった」
「隠密移動アプリとか持ってたのかも」
「便利すぎだろ、それ」
相手が現在、使っているのは<ボイス>一ブロック。
それほど強力ではない。一発で即死するような効果ではないが、追い込まれた状況が悪すぎる。
「のんびり付き合っている暇はないっての!」
発動条件はなんだ?
最初に声が聞こえた。アプリの名前から見て効果は予想できる。
相手の武器は声だ。
だから声が届く範囲までわざわざ接近してきたのだろう。
迷わず俺はリキャスト中のアプリを削除した。




