第7話『読者モデル』-1
すでにインストール可能アプリは七百を超えていた。
こんなおびただしい数、どうやって検索するんだよ……。
「ねえ、レンガ。これ、どういう意味だと思う?」
自分のデバイスを操作していたヨルコが画面を見せてきた。
さきほど使ってリキャスト中だった<ヒール>アプリ。
ヨルコがそのアイコンをじーっとタッチしていると、アイコンの下にメッセージが表示された。
『コピーしますか?』
アプリのコピー。
はたしてそのままの意味なのか。まさかここに来て銀色悪魔の罠とか……。
「ためしにやってみるか」
「そうね」
即決だった。アプリのコピー開始。
時間は必要なかった。リキャスト中のヒールがそのままデバイスの中で二個に増えた。
「コピーできるのか……」
俺も自分のデバイスを確認。<メクリ>をじーっとタッチするが、メッセージが出ない。あの強力だった<奥義>アプリをじーっとタッチしてみるが、メッセージは出ない。
「コピー可能アプリが限定されているのか……」
どうやらすべてがコピー可能ではないようだ。
「レンガ君、もうすぐ病院だよー」
アサヒの言う通りだった。まだ距離はあるが、この大通りをまっすぐ十分も歩けばユナがいる病院に到着する。
現在、ここは駅の近く。当然のように崩壊している。
バトルスタート時に人が大勢いたってことは、駅周辺にデバイサーも大量にいたのだろう。
そうとう暴れたのか、駅ビルはほぼ全滅。生き残った人たちはもう逃げたのか、人の気配はなかった。
ここの駅には駅地下があって、グルメ、ファッション、生活雑貨。かなり大きな地下ショッピングモールを展開している。
「たまにのんびりお買い物とか行きたいわね」
「だよねー」
「無事に生き残ったらな」
「夢がないよー、レンガ君」
「マイトリガー、誰か来ます」
一番後ろを歩いていたメクリが足を止めた。
あのバトルのあとメクリと合流して現在、三人プラスメクリ。
マップに表示された名前が、ゆっくりと確実にこちらへ近づいてくる。
デバイサー、即時コウ。
肉眼で姿を確認した。すらっと身長が高く、紺色系のさわやかコーデ。今までの相手とは少し雰囲気が違う。
俺たちの前で立ち止まり様子を見る。左腕にデバイス。間違いない、デバイサーだ。
襲いかかってくる動きがない。
それでも警戒を解くつもりはない。相手の動きに注意したまま声をかける。
「戦うつもりがないなら下がってくれ」
「おやおやおや、ボクを知らないのかい?」
残念そうに髪をかき上げ、さわやかに言った。
「あの有名なファッション誌に載った読者モデル、このボクの顔を知らないと?」
コウという男がそのファッション誌の名を言った。
「え、誰? 知ってる人?」
後ろの二人も首を左右に振った。
「ごめん、俺、マンガしか読まねーから」
「あたし体育会系だから」
「私ラノベ派なんだよー」
「なんだこのクソガキどもは!」
突然キレた。ダメな大人だな、この人……。
「何回も載ってるのか?」
これまでの余裕が消えた。コウが視線を逸らす。あからさまに動揺している。
「に、二回……」
「ん? なんて言った?」
「二回ですって」
ヨルコの一言。




