第6話『墜落炎上』-3
四ブロックの破壊力、なぜかリキャストが発生しないアプリ。
だがこれまでの戦いで思い知った。俺たちのアプリは万能じゃない。必ず弱点がある。
連続使用の条件はなんだ?
「ごめん、ちょい待ち」
ラッカの手が止まった。デバイスを覗き込んでいる。
「あれ、反応しない」
止まった。突然アプリの使用限界がきた。
「お前、この数時間で何機、墜とした?」
「知らないよ、けっこうたくさん」
さっきから連発しているのは間違いない。
連続使用に回数制限でもあったのか。
これまで墜ちてきた機体を思い出す。おそらくすべてに人間が乗っていた。
いや、連続ってことは……。
思い当たる事実。
「今、実際に飛んでいる飛行機しか墜とせないルールか」
使い切ったんだ。現在、飛行中のあらゆる旅客機を墜落させやがった。
「おっと、来た来た。次、来るよー」
どうやら喋っているうちに別の飛行機を呼び出したらしい。
すでに<ガード>はリキャスト中。よって使用不可。
「まずいわね」
つぶやくヨルコ。もう防御できない。
ここで俺たちだけが逃げることもできる。
が、さらに墜落は繰り返され犠牲者は増える。巻き込まれたデバイサーも犠牲になる。
近づく飛行機。どんどん高度が落ちてきている。もう呼び出されてしまっては助けられない。
この状況で俺たちが生き残り、この男、落町ラッカを仕留める方法……。
強力な四ブロック。
反面、さきほどの様子を見るかぎり、こいつは自分のアプリについて詳しくない。ほとんどまともに調べもしないで勝ち残ってきたのだろう。
ならば『スキル』について、ちゃんと知識があるとは思えない。賭けてみるか。
まずは敵の足を止める。
「……<ホールド>」
「なにすんだよ、お前!」
ターゲットの足下から急激に植物が生えた。前回シャッコウには踏み潰されたが、人間相手なら通用する。長い蔦がラッカの全身を縛り完全に動きを封じた。
これでしばらく身動きが取れない。逃げることもできない。
「このデバイスには色々なアプリが眠っている。もっと他の戦い方だってあったはずだ。お前は人の命を犠牲にしすぎた」
「分かってないね。自分の命が一番大事に決まってんだろ! 僕が生き残るための犠牲だ。僕のための犠牲だ! むしろ喜んで死ねばいいのさ!」
余裕の表情は変わらない。
「こんな足止めしたって無駄だ。僕のスキル……」
飛行機が近づいてきた。だが、ラッカのスキルは発動しない。
「おい、どーなってんだ、銀色悪魔! 不具合かよ! なんだ、このクソアプリ!」
それぞれのアプリにルールがあるように、アプリのスキルにも独自のルールがある。
そうだ、『スキル』の連続使用はできない。『スキル』にもリキャストがある。
自分のデバイスを、アプリを、こいつはもっと調べるべきだった。
「勉強不足だ」
「なに言ってんだよ、墜ちる、墜ちる、墜ちてくるよ……どうすんだよ!」
「最後のページまで、お前は悪党だったよ」
こいつのバリアは発動しない。
もうここにいる必要はない。
「アサヒ、ここから移動する方法あるか?」
「あ、私は大丈夫。<引っ越し>アプリあるから、タッチひとつで移動もラクラク。一瞬で場所移動できるんだよねー」
引っ越し、引っ越し、引っ越し。デバイスを覗くと<引っ越し>だらけ。これで生き延びてきたのか、こいつ……。
「俺もさっき高速移動できるアプリ見つけたから、なんとかなるな」
ヨルコをお姫様だっこで持ち上げる。
「え、ちょ、恥ずかしいんだけど」
「発動するぞ、五秒しかないから暴れるなよ」
「ふぇ、ちょ! レンガ! きゃあ!」
「<高速>発動!」
わずか五秒の高速移動。
一気にこの場を離れる。




