表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デバイス/デバイサー  作者: 清水雪灯
デバイス/デバイサー
36/51

第6話『墜落炎上』-2

「死んだかなー」

 相手の<墜落>アプリは四ブロックだ。破壊力はある。

「ありゃ、生きてら」

 確かめに寄ってきた男。ヨレヨレのジャージ姿。まるで緊張感がない。

 俺たちの姿を見て、あまり接近せずにあゆみをめた。

「いやー、僕のアプリって遠距離で使えるんだけど確認ができないんだよねー。たかの目みたいな高性能の視認しにんアプリとか欲しかったなー」

 ひょうひょう々とした態度。墜落で人を殺した、という認識がない。

「お前、なんてことしやがるんだ……自分が何をやったか分かってるのか?」

「仕方ないでしょ。それが僕の墜落アプリだもん」

 やはり同じアプリを連続使用していた。リキャスト条件が俺たちのアプリとはどこか違う。なにが条件なんだ?

「さっき、はじめてアプリ使ったら家ごと吹っ飛んでさあ、キミたち見た? この辺の吹っ飛びかたすごいでしょ」

 まるで罪悪感ざいあくかんのないかたくち

ほかに使えそうなアプリがなくってさー。これ優秀なんだよ。使ってみたらさ、スキル発動で自分だけオートバリアくの。最初の一発いっぱつで家族も吹き飛んじゃって。いやー、まいったまいった」

「お前……人間として、やっちゃいけねえことがあるだろうが!」

「だーかーら、なに言ってんの。これは悪魔が造ったアプリでしょ。あいつは人間の命なんてどうでもいいんだよ。ってか、いくら墜落したって、僕らの知らない誰かが死ぬだけでしょ。むしろ僕の勝利のために貢献こうけんできるんだから、光栄こうえいに思ってほしいよね」

 心のそこからき上がる胸クソ悪くなるこいつの理由。

「なに言ってやがる、てめえ……」

「んー、ちょっと実験してみたんだけどさー。この街にしか落とせないってのが不便ふべんだよね。きっとルールを決めた悪魔は、ここだけを戦場にしたいんだろうね」

 沸騰ふっとうしていた頭が急にえるのを感じる。

 このサバイバルのことばかり気にしていたから気づかなかった。

 あの銀色悪魔は確かにネットワークへ干渉かんしょうしている。

 電波をさえぎり圏外けんがいに変え、最初にケータイやスマホをゴミにした。

 さらにデバイスには定期的ていきてきに新作アプリがダウンロードされる。そこから俺たちはアプリを検索けんさくして、こうやって生き残ることができた。

 悪魔の存在。ネットに干渉する能力。

 だがそんな悪魔、本当に実在じつざいするのか?

 このサバイバルの犯人が、実は人間の仕業しわざ……。

 いや、考えにくい。

 バトルの裏側うらがわに、本物の悪魔が存在する。

 このデバイスは普通じゃない。もはや魔法みたいなモンだ。

 それを人間にばらいて血の封印をく。

 この街『五本市ごほんし』。俺たちがいた『銀書ぎんしょ学園』。

 名前の由来を考えると、シルバーエンカウントを完全に解放するには血の槍が五本は必要になるだろう。

 いるはずだ。悪魔はいる。

「ま、とにかく僕は生き残りたいだけさ。一気いっきにバーンとやって終わらせようと思ったのに……」

 なにより、今こいつを確実に戦闘不能に追い込むためのアプリが必要だ。デバイスに検索をかける。

「ね、我慢がまんはよくないよね。知ってるかい? 痛みを我慢すると人は弱くなる。我慢を続けると心はもろくなるんだって」

 なんとか声が届く絶妙ぜつみょうな距離。あいつのアプリが四ブロックってことは、あと一ブロックで何か仕掛しかけてくる可能性もある。うかつに飛び込めない。

「飛行機を武器とし、飛行機をあやつり、飛行機をとし、飛行機で地獄じごくをつくる。僕こそ最強のアプリを持つ者。そう思わないかい?」

 広範囲こうはんいへの攻撃。圧倒的な火力。安全な自分。

 確かに、生き残るには理想的なアプリだった。人としてくずになれるなら。

対人戦たいじんせんにおいて銃やミサイルはとても優秀だ。でもね、普通の射撃兵器ってのは射程距離っていう最大の弱点があるんだよ。でもこのアプリは違う。この街が戦場であるかぎり、僕がターゲットした場所に、いつでもどこでも素敵すてきなプレゼントを落とすことができる。まさに圧倒的。さながら神の力! これぞ神アプリ! ああ、神よ、神よ、神よおーう!」

「神よ、神よと、うっせーわ、ボケ!」

「分かるだろう? 僕のアプリは強すぎる。負けるのはキミたちのほうだ」

「負けいくさ、上等! それをひっくり返すのが王道だろうが!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ