第6話『墜落炎上』-1
<発見>靴下や手袋、消えた片方を発見できます。
<こんがり>クッキーがこんがり焼き上がります。
俺はパティシエじゃねーし。いや、便利だけど。
もう突っ込む気力もない。見なかったことにしよう。
あの三人はバトル終了まで身を隠すと言っていた。デバイスがなければ自分たちの名前は敵に表示されないので、追われるリスクはない。ただ無事を祈るだけだ。
不意に、圧迫感のある音が聞こえた。
うっすらと視界が暗くなる。
見上げると空に飛行機が飛んでいた。
いや、高度がおかしい。飛んでいる場所が明らかに低すぎる。さきほどシャッコウに突っ込んできた状況に似ていた。
その飛行機はどんどん俺たちの方向へ突っ込んでくる。
ただの墜落事故じゃなくて、まさかアプリ攻撃なのか?
「なにボーっと見てんのレンガ、アサヒも、ほらこっち!」
ヨルコが予想以上に強い力で俺とアサヒを抱き寄せた。
「離れないでよ……<ガード>発動!」
リキャスト解除されたばかりのガード発動。あらゆる攻撃から五分間だけ守ってくれるが、これではメクリまで防御できない。
「メクリ、一旦、離れろ!」
「了解です!」
爆発に巻き込まれないように、メクリが安全な位置まで距離をとる。念のためかなり離れた場所まで移動していた。一ブロックの防御力は低い。吹き飛んだら簡単にブレイクだ。
ドーム状のバリアが三人を包む。
がっちり肩を掴まれているため意外と密着している。
あの、ヨルコさん、おっぱい当たってます。
そして墜落。
地面を叩く強い衝撃。吹き上がる炎、爆音。広がる爆風。
ヨルコのおかげでギリギリ防御できた。
まだバリア効果が続いている。
すると、墜落した飛行機の残骸から何か出てきた。
動いている。いや、歩いている。
「助けて……」
黒コゲの何か。もはや性別も判断つかないほどの、人間だった。
そのまま数秒でちから尽き倒れる。それっきり動かない。
「なんてことしやがる……このデバイサー」
まさか客が乗った旅客機を墜落させるアプリなのか?
デバイスに敵の名前が表示されていない。
相手デバイサーは五十メートル以上離れている。このままでは相手のブロック数も分からない。
なにより落下地点が曖昧だった。ある程度こちらを狙っているが、そこまで正確な攻撃ではない。
いくら遠距離アプリでも射程距離の限界があるはずだ。
「……使い捨ての攻撃なのか?」
おそらくデバイサー本人はこの状況が直接見えているわけじゃない。
この攻撃を止めなくてはいけない。敵はどこだ?
当然、近くにいたら墜落に巻き込まれる恐れがある。アプリの性能を考えると、デバイサー本人はもっと離れた所にいるのか。
「レンガ君、あれ!」
真っ先にアサヒが見つけた。
さらに連続で墜ちてくる飛行機。アプリの連続使用。
どういうことだ、リキャストが発生しないのか?
俺の貧弱な一ブロックだってリキャストがあるのに、どうなってんだ。敵アプリの使用条件が分からない。
「このまま動かないで。まだガード効果続いているから」
ヨルコの緊迫した声。目の前で起きる二機目の爆発。
バリア効果のおかげで無事に済んだが、これでは防戦一方になる。反撃の糸口がない。
しばらくしてドーム状のバリアが解除された。
リキャストが発生しないアプリ、そんなアプリが本当にあるのか?
「次が来る前に手を打たないと……」
するとマップに誰かが近づいてきた。ようやく名前が表示される。
デバイサー、落町ラッカ。




