第5話『他校遭遇』-5
「あー、あと着火アプリとかね」
「ん? 着火?」
ひらめきが走った。
「すぐインストールしてくれ」
現在リキャストになったカウンターを削除。すかさず俺も<導火線>をインストール。
ヨルコの<火薬>。
俺の<導火線>。
アサヒの<着火>。
条件は揃った。
一分のインストール時間。
刀が一分のブレイク時間。
お互い一分の沈黙。
目の前で邪魔だった巨大クッションが斬り裂かれた。
ゼンのほうがわずかに早い。相変わらずバツグンの切れ味。
<アプリ/ブレイク>
クッションがブレイク。想定内だ。
同時に戦闘再開。
障害物が消滅して一気に接近してくる三人。
デバイサーが増えれば使えるアプリも増える。
戦闘が長引くと不利と感じたのか、あちらにも焦りの色が見えた。
「アルティメットほにゃららーっ!」
かなり向こうで大爆発が起こった。
ウチのアプリは生きてるか?
「メクリ!」
「参ります!」
さすがメクリさん。
短期決戦は狙い通りの流れだ。
ただし相手の攻撃以上に先生の防御アプリが厄介だ。俺たちの攻撃をほぼ無効化してくる。
あれをなんとか黙らせるためには……。
「メクリ、車まで走れ!」
「イエス、トリガー!」
高速で背後から接近。
スピード勝負なら行けるはず。
メクリの動きにゼンの視線が動いた。
「フロート!」
発動。まずあの三人が乗ってきた軽を浮かす。
「アタック!」
「了解です!」
それを殴りつけ空中をなめらかに滑る自動車。
こちらとあちらの中間地点。それぞれのあいだに車が障害物となって互いの視界をさえぎった。
フロートの効果はたった五秒だ。すぐに落下する。
「リフレクト!」
先生の声。アプリ発動。
落ちてくる車から生徒たちを守るため。その行動、その責任感が仇となる。
いくら盾のリキャストが短いからって、再使用までほんの数秒はかかるはずだ。
いま必要なのは、その『数秒』だけ。
あの盾を封印できるわずか数秒があればいい。
「ヨルコ、火薬だしてくれ!」
「オッケイ!」
その火薬アプリに、俺の長く伸びた導火線を巻きつける。
「行っけえええーっ!」
アンダースローで車の下に投げ込む。
「アサヒ!」
「ほい、着火」
邪魔な車をぶった斬るゼン。
直後、盾の効果が切れた瞬間に彼らの足下で起こる大爆発。
三人とも吹っ飛んだ。
爆音、爆風。そして、しばらくの静寂。
倒れている三人。
近づいてみると、デバイス本体から煙が上がり、画面がブラックアウトしていた。真っ暗なまま何も映らない。
すっかりデバイスは焼け焦げた。
同時にこちらのマップから三人の名前が消えた。サバイバルの権利消失。




