第5話『他校遭遇』-4
「ま、やるしかないか……」
ナナカもゼンもアプリに破壊力がある。
とはいえ、まず最初に相手すべきは……。
「……<カウンター>発動」
考えつつアプリを発動。このカウンターは一回しか使えない。
やはり前衛キャラが先だろう。
とにかくゼンの刀が危険だ。
たったひと斬りで致命傷になりかねない。
「見ての通り俺のアプリは一ブロックだ」
自分一人でジリジリ近づく。
今さら言わなくてもヨルコは必要以上に前に出ない。
「俺のアプリは弱い。んなこたぁ分かってる」
駆け出す。
先に反応したゼンが前に出てきた。
「だが、たとえアプリが弱くても、俺が弱いわけじゃねえ!」
ゼンの刀が目の前に迫る。こっちは素手だ。圧倒的にリーチで負けている。
デバイスをタッチ。刀が触れる直前、叫んだ。
「<閉じる>!」
アプリ発動、刹那。
牙の生えた本が地面から飛び出した。口を開くように本のページを開きターゲットを足下から飲み込もうとする。
全体でニメートルほどか。人間くらいなら丸飲みできるサイズの本だった。
そのまま目前にあった刀にかじりつく本。
本が閉じた。
だが一ブロックでは三ブロックの刀を破壊できない。
本にかじられて多少スピードが落ちただけ。
勢いを殺された刃、その先端が俺の肩に突き刺さる。
左肩に刺さった刀。オートで発動した<カウンター>が、自身の痛覚を無視して俺の右腕を動かした。速く鋭い右フックがゼンの顔面にめり込む。
「ぐはっ」
中学生に本気パンチ。
ゼンの手を離れた瞬間、刀アプリが消滅した。
<アプリ/ブレイク>
「どーよ! 最弱の一ブロックでも戦えるぜい!」
肩から血を流してドヤ顔決めてやる。
しかし先生もまだ動ける。ゆるキャラ暴走中。
ここでたたみ掛けないと。
身構えていると、空から声が降ってきた。
「あーああああっ!」
どうやら近くのビルから飛び降りたらしい。アサヒだった。
「あんの、バカ! 何やってんだよ!」
場の空気を読まない幼なじみが降ってきた。
「ヨルコ!」
「分かってる<クッション>!」
猫顔の巨大なクッションが出現し、地上でアサヒを受け止める。
「お待たせーっ!」
「なんて高さから降ってくんだよ。あのまま落ちたらモザイクなしでトマトだぞ!」
「新鮮なうちに召しあがれー」
短いスカートをたくし上げる。
「いや、それどころじゃねえだろ!」
反省してないチビっ子、女子高生。無事に巨大クッションからすべり下りて着地成功。
「ヨルコちゃん、ほい、交代!」
「え、ちょっと、アサヒ?」
ポンポンとヨルコの肩を押して、俺の隣りにアサヒが並んだ。
「回復役が前に出すぎちゃダメっしょ! ヨルコちゃんが倒れたら私たち全滅だよ!」
これでようやく戦えそうなメンバーが揃った。
で、けっこう離れた場所でマンションが崩壊していた。ゆるキャラが戻ってくるまでに多少の時間はかかるだろう。
「アサヒ、使えるアプリあるか?」
「あ、私、お掃除アプリあるよ。えーっと、効果。なんでも吸い込みます」
「ただの高性能な掃除機じゃないか」
「あとは移動に便利な<お引っ越し>とか、キッチンの<水アカ落とし>アプリとか」
今すぐ使えるモノではない……。




