第5話『他校遭遇』-1
<高速>五秒間だけ高速移動できます。
<カウンター>自動的に反撃できます。ただし一回のみ。
一時的な身体強化アプリ。先にインストールしておくか。
直接的な武器にはならないが、ないよりマシだ。リキャスト中のアプリを削除して入れ替える。
進むしかない。
戦うしかない。
あの人の無念を晴らすために。
あの人の願いを果たすために。
まずヨルコのサポートがないのでメクリを出現させておく。
「ブレイクだらけで辛くないか?」
「トリガーを守れないことが一番の苦痛です」
泣けてくるぜい、メクリさん。
壊れた道路を進みつつ、とりあえず病院がある方角に向かう。
崩れた街並みに混じって電車のレールが伸びていた。
ちゃんと街が機能していれば病院なんて電車一本で行ける距離なんだが。
するとマップを高速移動する物体があった。
人間の移動できる速さではない。このスピードは車か?
しかも名前が三つ並んでいる。まさかデバイサーが三人もいるのか?
前突ゼン。
中撃ナナカ。
後守ゴウラ。
「マジで三対一かよ!」
「トリガー、下がって!」
近づいてきた紺色の軽自動車が、数メートル手前で急停車した。
ドアが乱暴に開かれ、まさに速攻。
刀を持った学生が迷いもなく突っ込んできた。
「あっぶねーな!」
俺とメクリのあいだに振り下ろされた一撃。なんとか回避できたが、道路がぱっくりと切り裂かれている。
こちらの反撃を警戒して、その学生は大きく後方に飛びのく。
デバイスで確認。刀を持っていたのが、ゼンという男だった。いや、男というには少し幼い。中学生くらいか?
「不意打ちで不利な状況から、すぐに態勢を立て直すとは」
「甘いな、逆境は最高のスパイスだろーが。こっちも色々と経験済みでね」
「行きます、マイトリガー」
メクリの反撃。突進力だけなら、かなりのスピードを発揮する。
「生徒は私が守る!」
車から出てきた背の高いスーツ姿の男が、ゼンの前に立ちはだかった。
三十代くらいか、さっきこの人がハンドルを握っていた。さらに教師風のセリフ。
学校からの逃亡組だろうか。
「リフレクト!」
メクリの鉄拳が打ち込まれる寸前、先生がアプリ発動。
半透明な盾が出現。攻撃を正面からガッチリ受け止めた。直後に砕け散る盾。
その砕けた破片がガラスのようにメクリの全身に突き刺さる。
メクリが跳ね返された。普通の防御タイプじゃない。使い捨てのシールド。しかも反射トラップ付き。
「大丈夫か」
「問題ありません」
刺さっていたガラスの破片が光になって消えていった。
「ディフェンダーが突っ込んでくるのかよ……」
ただ反射の衝撃は小さかった。
いつも一撃でブレイクされるメクリが、撃破されずここにいる。
デバイスを確認。マップには三人の名前と発動中のアプリが表示される。教師の防御アプリは一ブロックだった。生徒が持っている刀……普通の刀じゃなかった。あれもアプリだ。しかも三ブロック。意外と切れ味ヤバイかもしれない。
「私の盾はリキャストが極端に短い。攻撃を諦めて降参してもらえると助かるんだが」
ゼンという生徒がわずかに前に出る。
「先生、下がってください。誰か来ます」




