第4話『ドラゴン襲撃』-1
デバイスで新しいアプリを検索しつつ病院に向かう。
途中でアサヒとユウトに合流できればベストなんだが……。
ふとメクリが口を開いた。
「ワタシは活動中に、状況、情報を常に収集しております。ワタシがブレイクしていなければ、できるだけ皆さんの行動に参加させていただけると幸いです」
メクリがいてくれたほうが索敵や警戒のサポートになる。
「むしろこっちがお願いしたいくらいだ。それより、ずっと活動状態で体力が落ちるとか攻撃力が落ちるってペナルティはあるのか?」
「ありません」
ブロックの差があれど、メクリとシャッコウの種類は似ている。どちらも常にアプリが発動状態でデバイサーの近くに存在し、攻撃、防御に応用がきく。
これでブロック数が大きければ文句なし。最初からあのレッドドラゴンと殴り合えたんだが……。
いや、恨むなら銀色悪魔を恨むべきか。
「ちなみにワタシは寂しくなると」
「寂しくなると……?」
「乳首が黒くなります」
「それはダメだ! 乳首はピンクでこそ価値がある!」
「離れろ、ヘンタイ」
メクリの肩をがっちり掴んでいると、ヨルコに無理やり引き剥がされた。
「黒乳首の恐怖を知らんのか、お前は!」
「知りたくもないわよ!」
マップに反応があった。こちらの五十メートル以内に接近。デバイサーの名前が表示される。
青山トザン。
「え、あの刑事さん?」
ヨルコが自分のデバイスを見て、確認のためか、俺のデバイスを見る。
「間違いないわね……」
三人でデバイスを覗き込む。
そのすぐ後から、同時に二つの名前が出てきた。
赤尾キバ。シャッコウ。
……ってことは。
病院に向かっている途中で、キバに見つかって……。
「ガード効果が切れて追っかけられてるんだ!」
もうとっくに五分防御なんて切れている。デバイスの使えない刑事さんは自力で逃げるしかない。
どんどんこちらに向かってくる。
あいにくまだ、対シャッコウのアイデアなんてない。それどころか、まともにやりあえるアプリもない。
すでに顔面蒼白、息の切れたトザンが足を止め、ドラゴンの頭にいるキバに銃口を向けた。
拳銃を向けられてもまるで動揺した様子もないキバ。ただ前回と違うのは、あいつの頭が包帯でグルグル巻きになっていた。常に余裕のあいつでも、あの高さから落ちて死にかけたらしい。
銃声。
さすがに弾丸の軌道までは見えなかったが、キバの姿を見るかぎり命中はしていない。
刑事さんが呻いた。
「どうなってんだ、銃弾が当たらない、だと……」
シャッコウの頭上で自信たっぷりにあいつが両腕を広げた。
「ようやく気がついたか、ザコが! 自動的に発動するんだよ。これがシャッコウのスキル。確率変動回避だ」
メクリと同じく自動発動スキルだ。あの時、俺の死亡する未来をねじ曲げ、ページをめくる前に割り込んだように。
「接近戦で殴られてもかわす。斬られてもかわす。撃たれてもかわす。大陸に撃ち込むようなミサイルだってかわす。すなわちオレをプレイヤーキルすることは不可能!」
あらゆる攻撃が、攻撃そのものが事実を歪められ逸れていく。シャッコウのスキルが絶対回避なんて。
なんだそのチートスキル。反則だろ……。
「この五ブロックアプリを破壊することはできない。オレも殺すことはできない。そしてシャッコウの火力があれば無敵!」
仰け反り天を仰ぐキバ。
「どーよ、オレ様。これぞ圧倒的な破壊力。破壊力、破壊力、ココロときめく破壊力ゥゥゥーッ!」




