第3話『メイドもどき』-5
お互いの動きを警戒しつつ、カリンが洗濯機のそばに移動した。
「防カビ予防で内部を乾燥するシステムなのよ。一回使うたびにアレがあるから連続使用できなくて困るのよねえ」
つまり、巨大洗濯機が再始動できるってことか。
むしろリキャストとしては短いほうだ。俺がさっき使ったフロートもホールドもリキャストが一時間も発生する。現在、まだまだ封印中。
とにかく洗濯機が動くなら、先にこの<全自動メイド革命>を蹴散らすしかない。ターゲットが三ブロックならば、使える手段はただひとつ。
バトルの展開が早すぎてこれじゃすぐに手詰まりだな。どんどんリキャストアプリが溜まっていく。
メクリはしょっちゅうブレイクするが、リキャストの発生条件が『アプリをデリートした場合のみ』と書かれている。
メクリやシャッコウのような、ずっと具現化しているタイプは故意的に削除しなければ待機時間の心配がないようだ。
「連続使用できないから、あまりこの子に頼りたくなかったけれど……。仕方ないわね。行きなさい! 全自動メイド革命!」
「え、それも動くのかよ!」
洗濯機、発進。
もはや逃げ道を考えている場合ではない。
接近されたら吸い込まれる。
こうなったら確実にメクリの奥義を命中させるしかない。デバイスをタッチ。すでにブレイクタイムを終了していたメクリが光に包まれ出現する。
「どうしますか、マイトリガー」
「この<奥義>ってアプリを使う。攻撃力三倍ならあの洗濯機を……」
「破壊できます」
「ただし、一発勝負。相手に回避されたり、命中が浅ければ作戦失敗だ」
突撃してくる洗濯機。時間がない。
「ヨルコ、巻き込まれないように、できるだけ下がっててくれよ」
「本当に大丈夫なの?」
「たまには信じろ」
「言わなくても分かるじゃない……信じるしかないでしょ!」
「じゃあ安心だ。行くぞ、メクリ」
「了解です」
洗濯機の発動を見るかぎり、最初にメクリが吸い込まれた時、カリンは「吸い込め」と命令しなかった。つまりあの洗濯機はターゲットを特定できない。設定された距離に近づいた物を自動吸引するシステムだ。
ならば行ける。簡単だ。囮があればいい。
「それではデザートはキャンセルしておきますよ、ご主人様!」
この状況で敵に接近できて、メクリと呼吸を合わせ、なおかつ最高のタイミングでアプリを発動できる人物。
「うっせえ! メイドもどきが!」
自分を囮にして隙をつくればいい。
先に駆け出し<全自動メイド革命>に突っ込む。
「死ぬために突っ込んできたのかしら?」
「分かってねえな。ここが凡人と英雄の分かれ道さ!」
ドラム式のフタがオープン。反応した。そこから一気に俺は急カーブして洗濯機の右側に逸れる。
洗濯機は自動的にこちらを追跡して向きを変えた。
同時に、攻撃判定のない無防備な側面にメクリが接近。
カリンの表情が変わった。作戦に気づかれた。
だがもう行くしかない。
この洗濯機がターゲットを吸い込む瞬間、完全に足が止まる。
自分のデバイスにタッチ。<奥義>アイコンが点灯した。
デバイスに奥義の『名称』が表示された。
「いいねえ、このセンス、最高だ! <奥義>発動!」
ほんの数秒の出来事だった。
空に巨大な本が出現した。メクリが高く高く跳躍。
いつも読んでいる週刊マンガをそのまま巨大化させたデザイン。ざっと十メートルはある縦長の分厚いコミック。
その超巨大コミックを空中でメクリが抱える。
洗濯機に俺の身体が吸い込まれる。その直前。
「叩き込め! <奥義>コミック・フェス!」
「イエス、マァイ、トリガーァァァァァァーッ!」
メクリが巨大なコミックを振り下ろす。この一撃は三ブロックに相当する。
俺たちの情熱は洗濯機ごときに負けねえ。
奥義、コミック・フェス。圧倒的な存在感で、そのまま巨大洗濯機の表面を砕き、本体をぶち抜き、内部の部品を次々とばら撒き、その巨体を真っ二つに叩き割った。
<アプリ/ブレイク>
洗濯機を完全破壊。瞬時に消滅。




