第1話『戦場学園』-14
「まず、はぐれたアサヒたちを探さなくちゃいけない。探索アプリ使えるか?」
「やってみる」
ヨルコの弟ユウト、アサヒ、二人の名前を入力して居場所を探索する。
反応は早かった。マップに二人のいる方角が矢印となって表示された。
「二人とも同じ方向に向かってるわね」
「あっちは病院があったはずだな」
確かにこういう状況なら、普通は警察に匿ってもらうか、人が集まりやすい病院に行くだろう。お互いに連絡がとれない以上、合流しやすいポイントを選ぶのは賢明な判断だ。
なによりも、たった一人で単独行動が一番危険。偶然とはいえ、あの二人が同じ方角に向かってくれたことは幸運だった。
迷うことなく三人で全力ダッシュ。
「やァりやがったな、一ブロックデバイサー……」
背後から呪いの言葉が聞こえた。
殺意を剥き出しにした奴の声。
あの高さから転げ落ちてパックリと額を割り、顔面を赤く染めた男がこっちを睨んでいる。血だらけでもなお、あいつの目力は衰えない。
ふらつく足取りでシャッコウにしがみつくキバ。脳震盪でも起こしているのか、さすがに歩けないらしい。
「このバトルで初めてオレに傷をつけた男。覚えたぞ、お前の名を。忘れねえぞ、お前の名を! 追いつめて必ず殺してやる。殺してやるぞ、壁無レンガァァァーッ!」
キバの絶叫を背中に感じつつ、ようやく学園の外へ。
あいつが動けない今がチャンス。とにかくここを離れる。
「まだ二人とも、それほど遠くには行ってないはずだ」
その時、強烈な血の臭いがした。
学園の中心。
崩壊した校舎。
「レンガ、あれ!」
そこに吹き上がった血の柱。それは形を変え、真っ赤な槍となって天に昇った。
あれは確実に人の血を吸っている。この学校でもう何人犠牲になったのか分からない。
何かが外れた感覚。
「封印が解けたのかしら」
ヨルコも同じ答えに気づいたらしい。
俺たちが暮らす街。
この街『五本市』は戦場に選ばれた。
吹き上がった赤い槍。今まで認識できなかった悪しきモノが解放された空気。
「ねえ、もしかして、すべての封印が解けたら」
「登場するってことか……」
あの銀色悪魔、いったいどれだけの血を吸い続けるつもりだ?