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デバイス/デバイサー  作者: 清水雪灯
デバイス/デバイサー
13/51

第1話『戦場学園』-13

 これが俺の答えだ。

「フロートォォォーっ!」

 発動、同時にす。

 ターゲットはシャッコウに設定。

きろ、ザコがーッ!」

 これまでのバトルでシャッコウの行動パターンは分かっている。

 まずキバの命令があり、ターゲットを狙い、息を吸い込むモーションがあり、ようやく炎が吐き出される。

 どれだけ攻撃、防御ともに強大でも、それらの行動をキャンセルできない。

 攻撃までのタイムラグはかならず発生する。

 先に俺のフロートが効果を発揮はっきした。

 レッドドラゴンの全身がいちメートルほど浮かび上がる。

 制限時間は五秒。

 アプリ効果は『あらゆる』ターゲットを浮かせる。つまりそこには大きさも重量も制限はない。相手のブロックすうも無視して浮遊ふゆうさせる。

「なん、だとッ!」

 ドラゴンの頭上にいたキバが不意ふいを突かれバランスをくずした。

 安全なシートベルトも何もない。身体からだささえることは不可能ふかのう

 その条件はシャッコウも同じ。

「普通の人間、なめんなあああーっ!」

 シャッコウへ全力の体当たいあたりをかます。

 ほんのわずかなプチ無重力むじゅうりょくなら、小さな力で相手のバランスを崩すことができる。

 あとはすべてが自動的だった。

 支えをうしなったレッドドラゴンが空中で転倒てんとうする。

 たった五秒。

 すぐにみずからのおもさを取り戻し地上に叩きつけられる。

 ドラゴンがぶっ倒れた衝撃で周辺に土煙つちけむり轟音ごうおんひびわたる。

 そしてあいつが落ちてきた。

 たとえ強力なアプリを持っていても、デバイサーは俺と同じ人間。高さ二十メートルの高高度こうこうどから落下して無事に済むわけがない。

 キバが落下して数秒。

 動いた。容赦ようしゃなく地面に叩きつけられても、あいつはまだ生きている。

「チャンスだ。トドメを刺す。あいつをめなきゃ、もっと被害が広がる!」

 近づこうとした俺の腕を、強烈きょうれつ握力あくりょくでヨルコがつかんだ。

「待って、レンガ。落ち着いて。あたしたちにとって今、勝つことが目的じゃないの。生き残ることが大事だいじなの」

 目前にある最大のチャンス。

「このチャンスをのがすのか? あいつをかしておいたら、これからさらに命を落とす人だって……」

「命がけなのは、こっちも一緒いっしょでしょ!」

 一瞬いっしゅん沈黙ちんもく。ぶつかる視線。

 シャッコウは転倒しただけ。じきに起き上がる。

 キバにトドメを刺したくても、この状況で確実に人間を殺せる武器が……。

 武器が。

 武器。

 …………ない!

「お願い。これからのバトル、あたし一人ひとりじゃ無理かもしれない。ちからを貸して」

 ヨルコの言葉を自分自身に言い聞かせる。熱くなりすぎている。

「忘れないで。これは生き残るための戦いなのよ」

 分かっている。分かっているつもりだった。

「ねえ、レンガ!」

 頭をやせ、冷静れいせいになれ、俺。

「……ああ、分かってる……」

 言いあらそっている場合じゃない。

 ヨルコの手をとって走りす。

 学園のそと目指めざし、校門へ向かって疾走しっそうする。無言むごんでメクリも並走へいそうしてきた。



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