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神速の騎士王  作者: 天月 能
2章 倭国事件
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No.8:大和国

「遅い!」


そう声を張るのはNo.4ランスロット・エヴァンスだ。ランスロットは騎士団の中で最も騎士らしいと言える。


「遅いも何も定刻通りじゃないですか」


「5分前行動は基本だろう! 他国にも示しがつかん!」


アーサーはため息をつきながら部屋の角にある椅子に座った。


「アーサーも大変ね」


そう言うのはNo.28エリス・ギャレットだ。年齢は20歳で騎士団仲間というよりは姉という感覚で今まで過ごしてきた。


「ほんとだよ。俺あの人に目でもつけられてるのか」


「うーん、どうだろ。アーサーが1番若いから心配してるんだと思うよ」


「それならいいけど」


辺りを見渡すと全員が揃っているが1人がいなかった。


「シャルロットは?」


「シャルロット様は陛下のところで最終確認をしてると思うよ」


「そうか」


 そして出発の時がやってきた。団長とその他の騎士団のメンバーが城門前まで送りにきてくれた。団長と話していると出発の合図がかかった。


「では行ってきます」


「将軍様たちによろしく伝えておいて」


「はい」


馬車はゆっくり出発し目的地へと2週間かけて向かう。アーサーたち騎士団は皇帝の乗る馬車や食料などの荷物の護衛及び警備に付く。アーサー、エリス、シャルロットは1番先頭の馬車のところにいる。


「毎度思うけど歩いてもついていける速さってかなり遅いよね。それを2週間は苦行そのものだよ」


「そんなにしんどいならお母さんがおんぶしてあげようか」


「やめてくれ、俺は赤ん坊じゃないしそんな趣味もない」


「ちょっとしたジョークよ」


「シャルロットが言うとジョークに聞こえない」


「そんなことないわよ、ねぇエリス」


「えっ、いや・・そうですね」


「エリスまで疑ってる」


先頭での会話とは思えないがこんな会話がしばらく続いた。盗賊でもなんでもいいから何か起きてほしいと心の底から思う様になってくるが冷静に考えればこんな武装集団を襲う盗賊は馬鹿そのものだ。よって道中何も起きないことは必然と言える。

 その日の移動は終わりになった。騎士でもさすがにずっと歩き続けるのは不可能だ。皇帝も馬車から出て伸びをする。座るだけでもなかなか疲れるものだ。


「皆の者ご苦労であった。まだまだ先は長いがよろしく頼む」


皇帝陛下からの労いの言葉だ。その一言だけでも今日1日頑張ったと思える。ため息をつきながら近くにある木の根元に座り込む。配られた夕食に手をつける。するとエリスが隣に座ってきた。


「1日お疲れ様」


「そっちこそ。相変わらずまずいご飯だな」


「仕方がないよ、遠出してるんだし」


「シャルロットは?」


一瞬間があいた。


「シャルロット様は陛下のところでご飯食べてるよ。あとランスロット様も」


「シャルロットは人付き合いがうまいよな」


「そうかもね。陛下の前でも普通に入れるしどんなに性格悪い人でもやり過ごすし」


「肝が座ってるよ、ほんとに」


アーサーはシャルロットと皇帝がいる方向を見ていた。


「ねぇ、アーサー」


「なに」


「アーサーはさ、一緒に住んでる女の人のことどう思ってるの」


エリスは料理の方を見ながら言う。


「そうだな、一緒にいて悪い気はしないし料理うまいし髪綺麗だしお淑やかだし良い女性だと思うよ」


「けっこう褒めるね」


「そうか?普通だと思うぞ」


「普通はそんなに褒めないし」


「どうと聞かれたから答えただけだ」


アーサーは夕食を食べ終わりその辺を歩いてから寝た。いつもの柔らかいベッドではなく大きな木にもたれながら寝た。ここからは交代制で周りを見張る。アーサーは先に寝ることになった。

 その夜夢を見た。いい夢ではない。昔の自分の夢だ。アーサーは弱い自分が嫌だった。昔団長に助けられて当時のアーサーは団長が強さの象徴のように見えた。恐怖に怯える自分の姿、泣きじゃくる自分の姿、自分の弱いところ全てが夢ででてきた。そんな時に肩を軽く叩かれる感覚とよく聞く声が聞こえてきた。アーサーは飛び起きるように目を開け覚醒した。


「大丈夫、アーサー。汗すごいけど」


エリスが起こしてくれた。アーサーは深呼吸をした。


「なんでもない、ありがとう」


「嫌な夢でも見た?」


「うん、昔の俺を見た」


「昔のアーサー?」


「嫌な記憶だよ」


そう言うとアーサーは立ち上がり背伸びをして自分の顔を両手で叩いた。


「さて今日も1日頑張ろうか」


喝を入れアーサー達は仕事を始めた。見張りを続けていると時期にみんなの目が覚め始める。朝7時に全員が完全に起き朝食をとる。相変わらずまずいご飯だが食べれないこともない。パサパサのパンにトマトを煮込んだスープに一杯の水。もう少しマシな物をと思いながら食べた。

 こんな旅が2週間近く続きやっと大和国が見えた。アーサーは猫背状態で歩いていた。


「やっと着いた。遠すぎ」


「本当に遠いね。しかもじめってして暑いし」


「汗が止まらないよ」


「もう少しよ2人とも。城の中に入れば氷の魔法のおかげで涼しいはずよ」


シャルロットは瞬間移動で先に検問所へ先に行き入国審査を済ませた。2週間かけてやっと着いた大和国。街並みは和風建築になっており、町の中心には石垣がありその上には立派は城がそびえている。アーサー達は真っ直ぐ城の方に行き入城した。


「お待ちしておりました。こちらに」


使者が案内をしてくれ馬車を止めた。すると走ってくる足音が聞こえくる。


「やっときたかアーサー! 早速勝負だ!」


「ちょっとまってくれ、疲れてるからもう少し後にしてくれよ、兼続」


足音の主は大和国が誇る10人の精鋭部隊の1人飛鳥兼続、アーサーの友人だった。



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