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神速の騎士王  作者: 天月 能
第1章 帝国騎士団とソロモン王の書
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No.6:奪われた書

 敵は見たところ3人だ。入り口に2人、アーサーの目の前に1人。実力は未知数だが目の前にいる敵はアーサーと同じスピード系であることだけだ。アーサーと敵はお互い距離を置きつつ見合っていた。先に動いたのは敵の方だった。敵は足元に魔術を発動しその速さで消えた。敵はアーサーに襲いかかったがあっさりと受け止めた。ヒットアンドアウェイ方法で何回も襲いかかった。


「さすがは神速の騎士王。この程度の速さは余裕だな」


「体質上体の全てが速さに対応できるようにできてるんだよ」


アーサーは剣を構え神速で敵に突進した。敵はそれを難なく躱し切りかかってきた。相手は指に大きな爪を主武装にしている。アーサー達は超高速バトルを繰り広げ続けた。


「大したことないな神速の騎士王。魔術で対応できるなら神速も怖くないな」


「こんな所で本気出したらどうなるかわからないからな。あえて抑えてるんだよ」


こんな所と言うのは今いる場所は地下。部屋がかなり広いと言えど本気を出して被害が出れば考えるまでもない。


「でも、さっさと終わらせるにはやるしかないんだけどね」


アーサーの魔力は高まっていき魔神ザガンを呼び出した。


「なんだ、小僧。今日は2度目だな」


「ああ、力を貸してくれ、ザガン」


「いいだろう、ただし貰うもんは貰わせて貰うぞ」


「ご自由にどうぞ」


そう言うとザガンは消えたがその代わりにアーサーの右半身には黒い紋様が現れた。


「なるほどな、それが魔神の力か。ほんっとに楽しませてくれるな神速の騎士王」


「どう思おうが勝手だけど覚悟しろよ」


アーサーは指を鳴らした。するとアーサーの後ろに剣が生成された。それはザガンと同じ力。魔神単体としても使えるが魔神を自分と一体化すると力を使えるようになる。その時に右半身に紋様が現れるようになっている。アーサーは神速を使わず敵に向かった。アーサーは刀で敵は爪で攻防を繰り広げた。攻防の間に生成した剣を飛ばしたが紙一重で避ける。敵は避けた後に攻撃を仕掛けてくるがアーサーも避ける。それの繰り返しだった。何度か繰り返した。すると敵の呼吸が一瞬荒くなった。アーサーはその隙を逃さない。


「そこだ!」


アーサーは刀を敵に向け斬りつけた。敵は何とか避けたが武器である右手の爪が使えなくなった。焦ったのか敵はスピード系の魔術をフル稼動させ全力でアーサーを殺しにかかる。自分の最高速度を超える速さで攻められたらひとたまりもないが敵の速さはそこまで速く感じなかった。アーサーは剣を3本生成させ動く敵をよく観察した。敵が地下部屋の側面の壁を蹴ろうとした瞬間だった。アーサーは生成した剣に神速の効果を付与し敵の方向に飛ばした。2本は敵の両腕に1本は胸に深々と突き刺さった。


「クソ、剣にも……神速できるの……か。聞いて、ない。大将」


「今まで見せたことないから知らないのは無理ないよ。それよりその大将は君たちボスのはずだ。目的は何なんだ」


「知らない。我らはただ……本を取ってこいと……だけ……。」


敵は吐血しながら答えた。どうやらその大将はちゃんとした作戦は伝えていないようだ。だが今回の敵がどの地位にいるかはわからない。トップ陣のみに本当の作戦が伝わっているのかもしれない。

 アーサーが敵と戦っている間にシャルロット、オフィーリアも入り口の敵を正面にしていた。敵は1人のようだ。


「リアさん、お願いがあるんだけど」


「何でしょうか」


「私は広範囲、高出力の魔術がメインでこういう地下みたいな所は苦手なの。だからリアさん頑張ってもらうからね」


「お任せください」


オフィーリア達は戦闘態勢をとった。先に動いたのはオフィーリアだ。杖を地面に1回カツンと鳴らした。氷の中級魔術を発動。氷は壁のように薄くそして敵の方へと伸びていき敵の1人の半身を氷で覆った。敵は真っ二つになりもう半身が床へ倒れた。


「案外あっけないですね」


「警戒しなさい。こんなもので終わるはずがない」


シャルロットの予想は的中した。床に倒れた半身は立ち上がった。すると半身は傷がふさがりそしてまた1体の人形として蘇った。氷漬けにされた方も同じように半身が蘇生され氷もその時の熱で溶けていき敵が2人になってしまった。


「増殖の魔術ね、これは」


「増殖の魔術?」


「その名の通り増殖するの。切り口や切断面から回復していき腕が増えたり自分がもう1人になったりする魔術よ」


「対抗策はありますか?」


「おそらくあれは人形ね。血が出てないし。対抗策は体のどこかにある核を壊すこと。それしかないわ」


「わかりました。やってみます」


オフィーリアは炎熱系の魔法を発動し敵に向かって乱発する。しかし敵は水系の魔法で対抗し相殺し、そして敵は走って向かってくる。シャルロットは杖を床に置き前に出て格闘戦に入った。帝国騎士団は全員格闘術を身につけており、その中でユリエルとシャルロットはずば抜けている。シャルロットは敵の鳩尾を打ちさらに顎にアッパーを入れた。そして杖を拾い人形の脳の部分に杖の先を刺した。もう1体はオフィーリアが氷系統の魔法で動きを封じシャルロットが喉元を杖の先で刺した。2体の人形は完全停止しその場で倒れた。つまり核は壊されたということだ。


「いやーお見事、お見事。人形とはいえここまで簡単にやられるとは」


「あなた誰かしら。もちろん敵なんだろうけど」


「ええ、その通りです。そしてあなた方の倒した人形はですね、囮です。手をご覧になってください」


 男は丁寧な口調で言った。シャルロットが見ると手にあった本がなく何故かきゅうりになっていた。


「なんできゅうり?」


「手持ちに入れ替える物が無かったもので。市場で1番新鮮な物を買ったので後で召し上がってください。僕はこれにて帰らせてもらいます」


「待ちなさい!」


男は本を持ってその場から消えた。アーサー達の任務は失敗に終わったことになる。


「ここって瞬間移動などの移動は不可能とおっしゃったのになぜ瞬間に消えることができたのでしょうか」


「おそらく隠密系の魔術ね。しかもかなりそれに特化してる。道は一直線だけどその上に出られたら私でも無理ね」


「一直線なら間に合うのでは」


「一直線でもやり方によっては逃げ切れるわ。途中で止まって私達の行動を見ながら脱出とかね」


シャルロットの声のトーンは低かった。任務失敗をしたのだから当たり前だ。そんな時アーサーが近づいてきた。アーサーの表情も暗い。


「ごめんなさい。任務失敗しちゃったわ。戦いに夢中になりすぎたのが原因ね」


「アーサー、私もすみません。任されたのに失敗してしまいました」


「過ぎたことはしょーがないよ。とりあえず上に戻ろう。また新しい作戦立て直して奪還しよう」


アーサー達は無言で一直線の長く狭い道を歩いて、外に出た。



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