No.45:激闘の果てにその2
医務室に運ばれたアーサーだが思っていた以上に状態が悪い。体力がなさすぎて治癒魔術が安易に使えないこと。魔力の消費が異常だったために一種の昏睡状態になっていることなど手がつけられない。シャルロットが少しずつ自分の魔力を移しごく僅かの治癒魔術でなんとか一命を取り留めている。ランスロットは魔力の消費はアーサーほどではないため歩けるが背中の傷が跡となって残った。
アーサーの状態を聞きつけ駆け込んで来た家族が医務室の扉を開けた。アーサー、アーサーと何度も呼びかけてはいるが一向に意識を取り戻す気配はない。治癒が終わったランスロットもすぐにアーサーの下に駆けつけてた。母親はランスロットを見ると目の敵のように怒鳴った。分からなくもない。大切な子供がここまで傷ついたのだ。心配しない親などいない。ランスロットは申し訳ないと何度も謝った。痺れを切らした兄ケイが間に入り母親を止めた。ケイは地面に膝を落とし言った。
「サー・ランスロット。此度の戦い、アーサーのために全力を尽くしていただきありがたく存じ上げます。あなただからこそアーサーは自分の本気をぶつけることができた。おそらくアーサーは嬉しいと思っていることでしょう。母の言いたいこともわかりますがどうか母の暴言を許してほしい。そして目を覚ました時頑張ったと一言を添えてあげていただきたく思います」
「わかっております。騎士として最後までお付き合いします」
「先ほどの暴言、申し分けございません。冷静さに欠けていました」
「いえ、アルカディア夫人。親として子を思うのは当然のことです。私はそう言われて仕方ありません」
兄ケイの計らいでこの場は収まったがアーサーの状態は未だよくない。アーサーの回復まで閉会式は延期となった。
4時間ほど経った。運営の騎士団員が動き出した。生徒はそれを察し身だしなみを整えた。皇帝、学院長、ルキアノスとその他騎士団員が2人が会場中央に現れた。トロフィーとメダルを持っている。
『長らくお待たせいたしました。閉会式を行うため生徒は会場中央にお集まりください』
流れるように生徒たちは集まりクラス順に並び集まった。
『では、最初に授与式に移ります。第3位から、第3位は……、クラスカストル! 続いて第2位は……、クラスプレイオネ! そして待望の第1位は……、クラスデネボラ!』
3位から順番にメダルとトロフィーを学院長から受け取り自分のクラスへと戻って行った。
『後日学院の掲示板に順位表を掲示しますので今回選ばれなかったクラスはご確認下さい。早速個人戦に移ります。これは優勝者のみに贈られる賞でございます。では、選手入場! 惜しくもランスロットに負けてしまったが騎士団員に恥じない実力を見せつけた。No.30アーサー・アルカディア!』
入場とともに歓声と拍手が響き渡った。
『えー、今回の激闘の末完全に治りきっておらずなんとか立てるレベルまで回復しましたが歩くのはまだ無理そうなためNo.28エリス・ギャレット、No.29ユリエルと共に入場いたします』
ゆっくりと会場中央にエリスとユリエルとともに歩いて行った。トロフィーを渡してくれるのは皇帝だ。持てないため一時ユリエルに受け取ってもらった。
「よく頑張ったな、アーサー。少し顔つきが変わったか?」
「やっとやらなければならないことを終えたので気持ちはスッキリとしています。負けてしまいましたが決して無駄ではない負けです」
「うむ、なら良しだ。これからも学院生、騎士団員として期待している。それと傷が癒えるまで自宅で安静にしてなさい」
「はい、ありがとうございます」
アーサーたちは壇上から降りプレイオネのみんなが集まる場所に移動した。その後は学院長の言葉と皇帝の言葉で締められた。
『陛下、ありがとうございます。これにて大剣魔学院祭“ウラノメトリア”の閉会式を終わります。推薦については後日個人的にうかがうのでお待ちください』
ウラノメトリアは閉会しまた明日からいつも通りの日々が待っている。生徒たちは祭りの余韻に浸りながら寮へと戻った。
第3章はこれで終了です。第4章も随時投稿する予定なので是非読んで下さい。




