No.22:かつて共に戦場を駆けた輩
2人の戦いは最終局面へと入った。伊三郎が鬼になったと同時に伊助にも変化が生じた。それは今まで傷すら与えれなかったのに対し今は傷を負わせることに成功している。これも鬼の恩恵なのだろうか。2人の剣戟はより激しくなっていった。
お互いの剣がどんどん欠けていく。無理な戦いをしている証拠でもある。それでも止めず戦っている。2人の剣戟が勢いが増しお互いが後ろへと飛ばされた。
「いさぶろうっっっっ!」
「いすけっっっっ!」
2人は全ての力を剣に乗せ最期の一刀を振った。伊三郎は脇腹を深く斬られ出血とともに膝をついた。伊助は上半身と下半身を真っ二つに斬られ身体ごと地面へと倒れていった。伊三郎の鬼化は傷の修復を終えると解け正気に戻った。伊三郎は倒れている伊助の所まで寄っていった。
「お前さんの負けじゃ、伊助」
「ああ、そのようだ。実に楽しかった」
「わしは楽しくはない。お前さんをこんなまでにした奴を許しはせんだろう」
「そのことならいずれ誰かわかるだろう。私の口からは話せんのでな。許してくれ」
「お前さんが謝ることではないわ。まぁなんじゃ、ひと時でもまた打ちあえてよかったわい」
「そうか。なら私も生き返った甲斐があった」
伊助はそう告げると灰のように身体が崩れていき風と共に消え去った。アーサーもまたその瞬間に立ち会っていた。しかし俯く伊三郎を見て話しかけにくいかった。
「戻るか、アーサー」
「はい、戻りましょう」
伊三郎から声をかけられ頷いた。そのまま無言で城まで戻っていった。
一連の流れを将軍に伝えた。将軍もまた伊助のことは知っていたため悲しんだ。その他の襲撃も速やかに済まし出向いていた騎士団や雷皇のメンバーが次々と帰ってきた。相変わらず首謀者は現れずクリーチャー系や骸が大量に現れただけらしい。いつになれば終わるのかとアーサーは思った。
そうしてその日も終わり夕焼けの空の下、伊三郎が地面に座って黄昏ていた。
「伊三郎さん。夕食の準備がそろそろ出来上がるそうです」
「おお、アーサーか。すまんの、すぐに行くわい」
「えーと、その。あの剣士とはどのような関係だったんですか」
「伊助か。わしと伊助は同期でな、そりゃ毎日剣を打ち合って、どちらが上か競っていたもんじゃよ。けれど、何十年も前の戦で死んでもうてな。あの時はみんな悲しんだ。なのにあんな再開をするとは夢にも思わなかったわい」
「俺はその、よかったと思います。伊助さんは最後笑ってました。多分向こうは後悔なんてしてないと思います」
「そうじゃな。最後まで笑っておった。あやつらしいといえばあやつらしい」
伊三郎はそう言うと腰を上げ立ち上がった。
「すまんかった、さて夕食にするかの」
「はい」
伊三郎とアーサーは赤く燃え上がる太陽を後ろにし夕食の会場へと向かった。また日常に戻っていった。




