Sランク冒険者のようですよ!?
4月29日(金)の投稿となります。
スレイマンと名乗った男は、その蛇を思わせる顔に邪悪な笑みを張り付かせこちらに一歩踏み出した。
「下郎がっ!下がれっ!」
王太子の護衛の一人が威嚇の為にスレイマンに矢を放つが、その矢はスレイマンが手にした槍に弾かれる。
それに構わずさらに歩を進めると、王太子の護衛二人が駆け寄りその剣を振り下ろす。
しかし、一人は槍の石突きで吹き飛ばされ、もう一人は剣ごと槍に巻き込まれ吹き飛ばされた。
「なっ強いっ!?」ヤツバさんが叫ぶ通りスレイマンはかなりの腕を持っているようです。
「まさか、撃滅槍のスレイマンか?元Sランク冒険者の!」
王太子の前に身体をねじ込ませ庇いながらフィーリスさんが叫ぶ。
Sランク冒険者!?あいつが…
その問いに鷹揚に頷くと一端足を止めた。
「これはこれは懐かしい名前をご存知だ。もう二十年は前の話ですよ。」
そう言って槍の石突きで地面を叩く。
「さて、本来なら王太子殿下の首を頂きたい所ですが、名にし負う戦士ザック・ラーやAランク冒険者の方々とやり合うのは骨が折れますでな。我が輩が直接指揮をした作戦でもなし、ここはお暇させて貰いましょうか。」
「ここでお前を逃がすと思うか?」
と言って兄様が間合いを詰め剣を叩き付けるが、その攻撃は易々と受け止められる。
ギ=ザザの時とは明らかに違う本気の斬撃を柳に風とばかりに受け流すスレイマン。
「おお、これはこれは激しい。」
どこか余裕の表情で兄様の剣を捌くスレイマン。
幾たびもの剣戟を余裕で捌くがしかし、一向に攻撃に転じない。
すると兄様が突然飛びすさり剣を収めた。
兄様?
「本体ではないのか…」
との兄様の問いにより深い笑みで答える。
「ほう!さすがはラーの血族。気付きましたかな?さようここに在るは写し身。本体はこの槍と共にある。」
もしかして、槍の本来の持ち主は…
私の考えが顔に出たのかこちらを見やると慇懃に頭を下げた。
「イカルガの姫は聡明でおられるな。そうあのリザードマンめには貸し与えていただけのこと。」
そう言うとスレイマンの足が数十の蛇になりほどけていく。
「積もる話もあったが、これ以上はかの地、イカルガ本土にて再び相まみえましょう。」
そして身体は全て蛇となり森へと散っていく。
残されたのはくしゃくしゃになった槍の残骸と、物言わぬ骸となった、ギ=ザザの死体だけであった。ゴロツキの死体は消えていた。跡形もなく。
アメン教大神官スレイマン。
突然現れたの強敵に、私達は言葉を発する事ができなかった。