盗賊登場のようですよ!?
4月9日(土)の投稿になります。
早朝、門が通行できるようになってすぐに街を出る。
何事もなければ、夕刻までには次の街に着けるだろうと言う事で早朝の出発となった。
正直もう少し寝ていたかったが、できるだけ野宿を減らしたいという考えには賛成だ。
お金に余裕があるので護衛依頼などは受けていない。まあ全員Aランク冒険者を雇うとなるとかなりの依頼料が掛かるので、そもそも受けれない可能性もあったのだが。
この辺りに出るモンスターはカトリアス王国とほぼ変わりがなくゴブリンやオークなどが主だった。もう少し進むと、つまりは海に近づくとまた違ったモンスターが生息しているそうだ。
それよりも…
「後ろを着かず離れずに着いてくる馬車がいるね。」
ニーニャさんがそれとなく後ろを確認しながら教えてくれた。
「なんなのでしょう?」
ヤツバさんも後ろを見ながら聞いてくる。
こちらになにか用でもあるんでしょうか。しかし一定の距離を保ったままでこちらに接触しようとする気配もない。
「寄生、だろうな。」
兄様は後ろを見ずに答えた。
「寄生?」
私が聞き返すとチラとこちらを見て教えてくれた。
「小規模の商人達が、冒険者への依頼料を節約するためにおこなう行為だ。旅の冒険者や他の護衛を雇ってる商隊などの側にいてついでに守ってもらおうというな。」
ニーニャさんがムッとした顔で文句を言う。
「ああ、聞いたことがあるね。たしかギルドではそのときは無理に助けなくてもいいとは言われたけど…」
実際は難しいでしょうね。人情的にも。あと擦り付けという襲われた時に、こちらに近づきモンスターなどと戦わざるをえないようにする者もいるそうだ。
あまりに悪質な行為であるためギルドでは警告しているそうだが…
「なんかロクな商人に会ってないような気がしますよ。」私の発言に皆、苦笑をもらす。
「まあ、現状ではなにも出来ませんししばらく放置でしょうか?」カザリが御者台から意見してきたが、たしかに今はどうすることもできませんね。
「進路がたまたま同じだけと言われたらそれまでですからね。」
ヤツバさんは自分で言っておきながら納得出来てないようだ。
それに本当にお金がなくてやらざるをえないのかもしれませんし。
そう言うとなぜかニーニャさんに頭を撫でられた。なぜだ?
しばらくは何事もなく馬車は進む。しかし。
む!探知眼に反応が。前方に8、いや9かな?扇状に広がって展開している。
それに右手にある大きな岩の影にも4か…
「待ち伏せです数は前9右4。」
ん?後ろにいた馬車の反応が敵対を示す赤に変わった?これは…
「ほう多少は知恵が回る盗賊がいるようだな。」
兄様が感心したように言った。
「そのようですね。後ろの馬車は獲物を監視する役という訳ですか。」
カザリが戦闘準備をしながら考えを口にした。
なるほど。獲物の後を付けて戦力などを調べて、襲うと…
「まあその考えが浅はかであったと思い知らしましょう。」
ヤツバさんが刀の確認を終えて息巻いている。戦う事前提なんですね。
とはいえ、逃げるにしても前方は塞がれてますし戦うしかないのかな。
「右の4人は貰うよ。」今までの旅で退屈だったのかニーニャさんがやる気になっている。
「とりあえず、情報がとれそうなヤツを除いて生死は問わない…でいいなハル?」
ここで情けをかけると被害が広がるはず、実際知恵が回るようですし放置は危険かな。
私は頷くしかなかった。
暫く盗賊が待ち受けている所まで馬車を進めると前を完全にふさいだ格好で盗賊達が現れた。
「止まれ!ここから先は…」
前に出て来た盗賊の頭を一本の矢が突き刺さる。いつの間にやら番えてたカザリの攻撃だ。
「なっ!?」いきなりの攻撃に動揺する盗賊達。
そこにするりと何気ない動きで接近した兄様が瞬く間に2人を切り倒す。
「自分達から仕掛けておいて油断がすぎるぞ。」
そう言ってさらに一人を倒す。なんというか、目にも止まらないスピードというわけじゃないのに、目に見えているぐらいなのに対応できない。兄様の攻撃はそんな感じだった。
さて一方、いつの間にか馬車から降りていた目にも止まらないスピードの人は、探知眼の反応がもう4つとも消えてますね。おそろしい速さですね。さすがニーニャさん。
ヤツバさんは私と後方の馬車の警戒だ。
待ち伏せが失敗したことにようやく気付いたのか慌てて馬車の速度を上げてきましたがもう遅いですよ。
「我が右手に在りしは神戻りし大地!…降れ!土雷!!」
振り下りた雷の雨は馬車の中にいた盗賊達に襲い掛かった後、大地へと還っていった。
「自分の出番が…」ヤツバさんが恨めしそうな目でこちらを見て来た。ごめんなさいヤツバさんっ!