決着そして…のようですよ!?
3月14日(月)の投稿になります。
歪な怪物は、身の毛もよだつ咆哮をあげこちらへと飛び掛ろうとするが、その足を踏み出すことができない。なぜならば…
私は魔具である杖を媒介に、私の半神を呼び出す。
「来よ、来よ。我が母、木花之佐久夜毘売より共に生まれし我が半神、木春知流よ。この魔具を媒体に現臨せよ!」
一度杖はバラバラに砕け、そして雷光と花びらを纏い再び杖の形を取り戻す。
その姿は、頂点に大きな紫色の花を模した飾りを持ち、雷光を纏った美しい杖だった。
これが私の半神、木春知流、春の安らぎとその終わりを共にもたらす祝福と呪詛の二面性を持つ神の法具。
我が威光に恐れ萎縮している哀れなる者を見据える。
なんて歪んだ魂だろうか。
「可哀想に、無理やり呪印にて歪められた龍に至れなかった者よ。肉体には滅びを、そしてせめて魂には安らぎをあたえん。」
私が木春知流を天へとかざすと、幾つもの雷光が哀れなる容れ者に滅びと安らぎの両方を与えるために降り注ぐ。
そして、すべては終わった。
「…木花之佐久夜毘売つまりハナ姫のことは話に聞いたことがあります。陛下の一人娘であらせられた、けどある日いきなりご懐妊なされ宮中は混乱したと、だれが父親なのかもはっきりしないことで心無い噂などが横行したと、しかし陛下が一言ハナ姫にむけて、大儀とだけ告げられ騒ぎは収まったと…のちにハル姫がお生まれになってすぐに儚くなりあそばされたと。」
カザリがそう独り言のように呟く声を皆、聞くとはなしに聞いていた。
「やはり彼女はイカルガの王族なんだね?」
アーデルさんが納得したように聞いてきた。やはりということは薄々とは気づいていたということでしょうか?
私はカザリの背中で半ば夢うつつのまま聞いていた。
「そうでございますよ。アルロッド第三王子殿下。」
へ?アーデルさんが王子?
アーデルさんは照れたように頭を掻いて頷く。
「やはり気付いてましたか。カザリさん。」
カザリは答えずニッコリと微笑むだけだった。気になる、けど眠いですもういし、きが…
気が付くとそこは知らない天井だった。ここでやっとテンプレ達成です、じゃなくて!
ここは?皆は?
私がベットから起き上がり部屋から出ようとするといきなりドアが開いた。
「ハル様!お目覚めになったんですかっ!」次の瞬間ヤツバさんが飛びついてきた。
く、くるしいけどうれしい。などと悶えていると…
「お、ハル起きたのかい?よかったよかった。全然目を覚まさないから心配したよ。」
とニーニャさんがひょっこりドアから顔を出してきた。
「はいはい、嬉しいのはわかりますがまず姫様をベットに戻しましょうね。まだ体力も戻ってないでしょうから。」
と言いながら、ヤツバさんから私を引きはがしベットに連れていくカザリ。
「皆、心配かけたみたいでごめんなさい。」
皆にケガらしいケガは見当たらない。…ところで、ここどこでしょう?
「ここは王都カトリアですよ。姫様はまる三日間目を覚まさなかったのですよ。」そう言ったカザリの目元に涙の後が見える。
王都…あの後意識を失った私を連れて商隊と合流して、王都に向かったらしい。
現在は、王都にある宿屋に部屋を借りているそうだ。
本来の目的である、Sランク冒険者のマサキさんには私が目を覚ましてからと、会うのを待ってもらっているそうで大変申し訳なかった。
そして、あの時聞いていた話、アーデルさんが王子というのは本当らしい。
まあ、初めて会った時に貴婦人への礼をしてきたし、騎士以上の身分かとは思いましたが、まさか王子とは…なぜ王子が冒険者なんかやってるのでしょう?
ちなみに、カザリは彼が王子であるという情報は掴んでいて、アーデルさんのほうも私が貴婦人への礼をされても動揺がなく堂々としていたことから貴族の子女であろうと推測してたらしい。今アーデルさん達は事後処理に追われているそうで顔をだすのは夕方になるだろうということだった。
なんかわずか四日の間に色々あったなあ。そうだナビ先生にもお礼を言わなきゃ。あの時、先生の励ましがなければ今頃は。ありがとうナビ先生。
…ナビ先生?
『マ…スター、げ…ざい……により接触が保て…いじょうきょ…』
ナビ先生!?先生!!
そして先生の声は聞こえなくなった…




