大苦戦のようですよ!?
3月12日(土)の投稿になります。
戦いは、まずこちらからの攻撃から始まった。
アーデルさんの号令で、ギャリドさんの魔法はオーガイーターを襲う。
「…絡みつけ!アイス・バインド!」
バキバキと音を立ててオーガイーターの足に氷で出来た蔦が絡みつく。続いてナズローさんの攻撃だ。
「くらえっ!」一息で四連射!ナズローさんの放った矢は両目、喉、心臓に襲い掛かる。
『フンッ』オーガイーターはその攻撃を鼻で笑うと、目を狙った矢を落とすと後は刺さるにまかせた。しかし…
「あれを弾くかよ…」ナズローさんがぼやく。
だがその隙を突いて、アーデルさんが切りかかる!
『ヌルイ攻撃ダナ。』オーガイーターはアーデルさんの攻撃を躱すことなく受け止めた。
アーデルさんは受け止められた後素早く後ろに下がった。その後退をカバーするようにに、ギャリドさんの氷の矢の魔法が追撃しようとしたオーガイーターに命中する。
『攻撃ハタイシタコトハナイガ連携ハナカナカダナ』
なんでもなかったようにオーガイーターは魔法が当たった場所をこれ見よがしに撫でさする。
「まあたしかに僕の剣の腕は人並みだけれども…今ので傷一つつけれないとか。」
アーデルさんはそう言って盾を前に構え、再び突進する。
が、その途中でいきなり停止する。
『ヌ?』オーガイーターは怪訝な声を上げるがすぐに手に持っていた鉄の棒の様な物を後ろに突き出した。
「あぶなっ!?」
何時の間に後ろに回り込んでいたニーニャさんが慌てて回避に成功する。
「せいっ!」ニーニャさんをカバーする様にヤツバさんが切りかかる。
しかしたやすくその攻撃は弾かれる。
「くそ、やはり硬い。」ヤツバさんはゴブリンイーターとの闘いを思い出したのだろう顔をゆがめた。
『ツギカラツギエトアキンナ』あざ笑うオーガイーターの頭上に飛びあがったカザリの短刀が肩口に突き刺さる。それを異に返さず、空中に浮かんだままの無防備なカザリにオーガイーターの拳が襲い掛かるが、その拳を蹴りつけ難を逃れ着地する。
「私は戦闘は苦手なんですけどねえ。」などとぼやいているがまだまだ余裕そうだ。
そして皆がオーガイーターから離れたこのタイミングで!
「我が胸に在りしは神起こす炎!…走れ!炎雷!」私の胸より生まれた炎を纏った雷が凄まじい速度でオーガイーターへと…
『ムウンッ!』たった一凪ぎで火雷は消し飛ばされた…
うそ、でしょ…あんなただの棒で魔法をあっさりと。
『ベツニ喰ラッテヤッテモヨカッタンダガナ。コノホウガ絶望感ガ増スダロウ?…サテ、ソロソロコッチカライクゾ』
そう言って、オーガイーターは棒を軽く振ってこちらを見る。
『マズハヒ弱ソウナソコノ女魔法使イカラダ。』
気付いた時はもう目の前にいた。
「あっ」私はそんな声しか出せなかった。頭に向けて振り下ろされる凶器。
「ハル様っ!!」衝撃、そして私はなにかと一緒に吹き飛ばされる。
一体何が…とりあえず生きてはいる、だけど。地面に叩きつけられたのは私と、両腕が変な方向にねじ曲がった、意識を失っているヤツバさんだった。
「ヤツバさんっ!!??」
ヤツバさんは刀こそ握っていたが、明らかに腕が折れている。は、早く回復魔法を!
私は魔法を唱えようとするが…呪文が思い浮かばないっ!?
なんでっ!?おちつけ私っ! たしか、彼の者のキズを、えっとい、癒せああいや治せだったかなえっとえっと…
「ハルさん、どきなさいっ!」
カザイルさんがそう言って私を押しのけ、回復魔法を詠唱する。
魔法が完成するとヤツバさんの表情が心なしか穏やかになったような気がした。
そしてしばらくして目を覚ます。
「お、痛っ ハル様ご無事ですか!?」
目を覚ました瞬間に私の心配をしてくれるヤツバさん。
「ヤツバさんのおかげで…」そんなことしか言えない自分が情けない。
闘いは依然私達が不利な状況だった。なにせこちらの攻撃は当たるがまるで効いていないのだ。なのにあちらの攻撃が当たれば大ダメージを受けるのは必須だ。一体どうすれば。
「ハル様!あの魔法、伊都尾羽張は?」
ヤツバさんが勢いこんで聞いてきたが…
「あれは、今は使えません。」
そうあの魔法は、現在使用できない。あの時無理に使用したため、あの魔法を繋ぐ回路が使用できなくなっていると、ナビ先生から答えられている。
『フン、マダ向ッテクルカ。俺ニ勝ツナドトクダラン妄想ニ取リ付カレテイルノカ?ソウイエバアノ人間モソンナ妄想ヲ垂レ流シテイタナ。』
「あの男?」攻撃が掠ったのか右足を少し引きずったカザリが問いかける。
『アア、タシカ失ワレタ帝国ヲ復興サセル、ダッタカ』
「失われた帝国…ボルトーニア帝国?なら。」カザリが何やら呟いている。
『ソウイエバ。ヤツノ言葉ニヨレバ俺は失敗作ラシイゾ?トハイエ知恵ガアリスギテ制御ガ出来ないと言う意味らしいがな。』
やつは段々と言葉が流暢になっていく。でもそんなことより!
「人が人為的に作ったというのか…」アーデルさんが震える声で言った。
同種喰いを人為的に作り出すだなんてっ!?
ただでさえ恐ろしいオーガイーターだがその言葉を聞いて、なにかおぞましい物を見るような眼で見つめる皆。
『さあそろそろ絶望で心が満たされただろう?やっと肉が旨くなったな。』
そう言って獰猛な笑みを浮かべるオーガイーター。
戦闘回もうちょっと続きます。