異世界のランチをいただくようですよ!?
2月19日(金)投稿になります。
二人に連れられて、入口の側にある階段を上がっていくとそこが酒場になっていた。
アレーナさんが言うには、元々は食事のみだったらしいが、冒険者達の要望でお酒を出すようになりあっという間にお酒メインのまさに酒場へと変化したようだ。
「料理人は引退した冒険者がやっています。ギルドは引退した際のフォローもおこなっているんですよ。勿論味は保証します。ちなみにおすすめは、レディースランチですね。」と、アレーナさんが席に着きながら教えてくれた。
「では私はそれでお願いします。」お勧めをことわって他の料理を頼むほどここのメニューに詳しい訳じゃないしね。
「あたしは、冒険者のがっつりランチ、あ!大盛りでな!」ニーニャさんの注文にアレーナサさんは呆れながら。
「それかなりのボリュームなんだけど相変わらず大食いねえ、あ、私もレディースで。」
三人の注文を聞き終えたウェイトレスさんが、奥の厨房に注文を伝えにいくのを眺めながら周りを見渡してみた。
お昼時を少し過ぎていたが、広い店内は活気があった。食事を楽しむ者、なにかの打ち上げだろうか?酒盛りで盛り上がっている人達もいる。中にはどう見ても冒険者にみえない家族連れの人もいる。
「ここは一般のお客様もいらっしゃるんですよ。」と、きょろきょろしている私を面白そうに見ながらアレーナさんが教えてくれた。外から直接上がってこれる入口もあるそうだ。
程なくして三人の注文した料理が出てきた。私の分はニーニャさんのおごり、アレーナさんは自腹で払った。その際、ニーニャさんに奢らせようとしだが渋々自分で払うことになった。揉め事はカンベンしてください。料金は前金制のようだ。
私とアレーナさんの注文したレディースランチの内容は、野菜をたっぷり煮込んだコーンポタージュっぽいスープ、鶏肉?を焼いてたっぷりのソースをかけた物、後は黒パンである。それぞれそこそこのボリュームがある。おおーなかなかに美味しそうである。
ニーニャさんの冒険者のがっつりランチ(大盛り)の方は…
一言でいうとまさに肉! 肉の盛り合わせである。
まず目を引くのはステーキである。かなりの肉厚のものが二枚(大盛りだから)次に大きな鳥のもも肉が四本。スープは赤色でボルシチっぽい感じで、これまた肉がゴロゴロ入ってる。あとはアスパラっぽいやつに肉を巻いた肉巻き。そして沢山の黒パンである。見てるだけでお腹いっぱいになりそうだ。
「きたきた!さあ食うぞー!」早速ニーニャさんが肉にかじりついた。
「いただきます」私も食べようと手を合わせるのを二人が不思議そうに見てきた。
「なんだい?いただきます?」む、これは異世界テンプレの、いただきますを知らないってやつですか?私は説明しようと口を開く。
「たしか、イカルガ帝国の風習ですよね?もともとは神の神子≪みこ≫である皇帝から民へ食べ物を与えられているって考えから、皇帝から食べ物を頂く、って意味でいただきます、だったかしら?」…むう、こっちにもそんな風習の国があるのか。
「ほほう、じゃあハルはイカルガ出身なのかい?」すでに半分ほど食べ進めているニーニャさんが聞いてくる。んー、その設定でいいかな。イカルガってどこらへんにあるんだろ?
『イカルガ帝国は、イスカトリア大陸の東方に位置するイカルガ大陸を統治する単一国家です。マスターの記憶にある前世の文化、風習の情報との近似値があるため、そこの出身であるとするのは問題ないと思います。』おお、なんか久々に感じるナビ先生のお答えありがとうございます。
「ええまあ。」
「あたしイカルガ人って初めて見たかも。しかしハルは行儀よく食べるねえ。いいとこのお嬢様なのかい?」
「ニーニャ、気持ちは分かるけど、冒険者はその過去を詮索しない。でしょ?」
ニーニャさんはその言葉に頭を掻きながらあやまってきた。
「あーそうだったね。ゴメンゴメン。」
いえ、私はただの一般人です。それはスキル【礼儀作法(王)】のおかげです。
ほどなくして、美味しい食事も終わり、話はニーニャさんの依頼の話になった。
「それで結局どうなったの?依頼は達成したんでしょ?」
食後の紅茶を飲みながらアレーナさんはニーニャさんに問いかける。
「ああ、依頼のほうは集落のリーダーを倒したから、達成扱いになったけどね。ギルソールのヤツがねえ…」とため息。
「そう言えばギルソールさんは?たしか臨時パーティーを組んでたわよね?」
「くたばった!アイツの暴走であたしも死にかけたよ。まあそこでハルに助けられたんだけどね。」と私のほうを見て答える。
アレーナさんもちょっと眉をしかめながら。
「そう、いつかそうなるんじゃないかと思ってたけど、ニーニャは災難だったわね。」というかギルソールさんってどんな人だったのだろうか?話を聞くとあまりいい印象をもってないように聞こえるけど…
「ん?ギルソールかい?まあ一言でいえば傲慢でイヤな野郎って感じだったかな。まあ死人の悪口いうのもなんだけど。」
「たしか下級貴族の四男とかじゃなかったかしら?最初のころは実家の力もあって羽振りもよかったんだけど、実家からの援助が切られると実績を得るためにムチャな行動が目に付くようになったわね。って喋り過ぎたわね。」なるほど、それで集落につっこむとかムチャな真似をしたと…ダメじゃん!
食事も終わり、仕事に戻るというアレーナさんと別れニーニャさんと一階にもどる。なんでも助けたお礼を頂けるらしい、断ろうとしたがよく考えたら一文無しであるため有り難く頂戴することにした。。
「ちょっと武具屋によっていっていいかいか?そこで色々処分してからお礼をわたすよ。」とくに用もないので頷いて武具屋に向かった。