未来に向かってのようですよ!?
5月19日(木)二回目の投稿となります。
完結です!
……私が伸ばした手がお母さんに触れる。
そして、世界は光に包まれた。
泣いている。
「ごめんね、ごめんね」
小さな赤ん坊をそっと撫でながら彼女は泣きながら謝っている。
「ちゃんと育ててあげれなくてごめんね。抱きしめられなくてごめんね」
ああ、彼女はずっとこうやって……
「だめなお母さんでごめんね」
「お母さんっ!」
私は彼女に、お母さんに抱きついた。
「あたしは、ハルに抱きしめられる資格なんてないよ」
そう言いながらももう拒絶はしない。
「資格ってなに?そんなもの要らないよ」
私はさらに力を込めて抱きつく。
こわごわと、手が私の背に回る。
「いいの?抱きしめていいの?ハルを抱きしめても?」
「いいよ!抱きしめてよ!お母さん!」
すがりつくよう、逃げ出さないよう、腫れ物にさわるかのよう、愛おしいものにふれるように私達は抱きしめあう。
どれだけそうしていただろうか?
やがて、お母さんの身体が透けてくる。
「お母さん?」
「安心してハル。やっと解放されるのだから」
いつしかお母さんの身体は光輝き神力を纏っていた。
大魔王即如来。
私はふとそんな言葉を思い出した。
「あたし、ハルのお母さんでよかった」
「本当に?私もお母さんの子供で良かったよ!」
「あたしは神となるけどハルのこと見守ってるね」
ずっと すっと……
気がつけば私はヤツバさんに膝枕をされていた、
「気がつかれましたか?」
ヤツバさんが優しく微笑んだ。
周りには皆がいた。
「私はどれくらい気を失っていたのですか?」
「およそ一時間くらいでしょうか?」
カザリが水筒を差し出しながら教えてくれた。
「すでに撤収の準備は終わってるよ」
ニーニャさんが私の頭を撫でてくる。
「立てるなら移動しよう」
兄様も優しげな瞳をこちらに向けてくれる。
皆が撤収のために立ち上がる。
私も立ち上がる。
そっと空を見上げる。
空の向こうに神界はないけれど、神界で二人は出会えたかな?
やっと夫婦らしくやってるのかな。
そんな事を思い可笑しくなってしまった。
『マスター。皆が待ってますよ?』
そうだね。ねえサナリ?
『はいマスター』
これからもよろしくね?
『私は、何時でもマスターの側に』
「おーい!早く早くー!」
ニーニャさんが急かす。きっと街についたら飲みたいお酒があるに違いない。
「ハルさまー!」
ヤツバさんも手を振っている。
カザリはそれを見て微笑んでいる。
「きゃあっ!?」
突然腰に腕が周り高く持ち上げられる。
「いくぞ」
兄様が馬上に引き上げてくれたらしい。
「強引ですね!」
兄様は朗らかに笑い出す。
私は、この世界に生まれて良かった。
これからこの世界で生きていく。
皇・春人ではなく、ハル・スメラギとして。
少しの間だったけど、お母さん……
見守っていてね。
そしてこれからもよろしく皆!
馬は駆ける。帝都へ向けて。
私達の未来へ向かって……
これにてこの物語は完結いたしました。
永らくお付き合い頂いてありがとうございます!
初作品を完結させる事に気を取られ後半は中身が薄すぎた気もしますが、エタることなく終わらせられた事はこれからの力になるのではないかなと思ってます。
よろしければ他の作品も見ていただければと思います。
『貧乳眼鏡っ娘の俺が異世界で無双するようですよ!?』
を読んでくれてありがとうございました!