狂神のようですよ!?
5月16日(月)の投稿になります。
新シリーズ、『笑わない少女は血薔薇と舞う』を始めました。そちらもよろしければご覧いただけると幸いです。
こちらは21時更新となっております。
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外典のモノと一体となったスレイマン。
そのスレイマンの足元の地面から次々と沸き出してくる蛇達、それらはスレイマンの身体に巻きつき新しい身体となっていく。
外なる法と、現世の法とが混ざり合い新しい法が生まれる。
「これこそが新しい神の誕生だ。」
黒く艶々とテカリを帯びた肌、所々に蛇の鱗を持ち、禍津文字が不気味に輝く。
身長は2メートルを超えスマートであるが筋肉も程よくついているようだ。
そして、その頭部はスレイマンそのもの…いやスレイマンを若く二十代まで若返らせた感じだろうか。
「遥か古代にて猛威を振るったとされる魔王シャイターン。女神ル・シャラにてイスハーン大陸に封じられたと言う存在。我が輩はな、かつてシャイターンと戦いし勇者の末裔よ。」
スレイマンが突然語り出しました。
勇者?
『勇者とは、女神ル・シャラによって異世界より召還される存在の事です。ル・シャラは現在はイスハーン大陸にて眠りについているの為、召還は行われておらず現存していない筈です。』
異世界人…スレイマンはその末裔?でもそれが何故?
「憧れておった。かつての我が先祖を。自らも勇者とならんとし、冒険者を目指したものだ。しかし…今この世に魔王は居らず、人間同士が醜い争いを繰り返すばかり。」
そう言いこちらを見やる。
「冒険者であった時、アメン教徒討伐依頼を受けた際偶然知ったのだ。アメン・ラーの悲しき思いを。そして思ったのだ。悪逆と呼ばれる者達であってもそこに至るまでには理由があると。」
スレイマンは顔を手で覆い続ける。
「そして偶然我が先祖が残した手記を見たのだ。そこに書かれていたのは…この世界に対する怨みだった。無理やりこの世界に連れてこられて戦いを強制される。彼は逃げ出したそうだ。この大陸へ。」
スレイマンの口上は絶好調だが、話が見えてこない。
彼はなにが言いたいの?
その後も彼は次々と話をするがまるで関係ないような話もして訳がわからない。
効率的なモンスターの倒し方やアメン教の教えの素晴らしさ。果ては…
「つまり人参だよニンジン!人参こそが最高に美味いのだ!」
これは…
「狂ったか…」
そう、スレイマンは狂っていた。耐えられなかったのだ。魂が。
禍津文字を作り出した禍津龍、その神を呪った呪が神への階梯を登りつつあるスレイマンに牙を剥いたのだろう。
終わらせよう。
私は紗鳴を構え…
スレイマンは突然天を仰ぎ叫ぶ。
「偉大なる汝の名を呼ばん!汝が名は、木花之知流夜毘売!」
そう叫んだ後スレイマンは粉々に砕け散った。
ああ我が吾子よ、我が吾子よ我が愛しき娘よ。そこに居たのですね。そこに居たのですね。
我が吾子よ。
上空から降り来る。
闇よりなお深く、夜よりなお暗く。
全ての悪意を塗り固めたモノ…
全ての狂気、全ての狂喜…
我が母上!
完結まで後少し。